太田雄貴のEnjoy FencingBACK NUMBER
五輪金メダルは最上位目標ではない!?
「突け、心を」を説くフェンシング協会。
posted2018/05/07 07:00
text by
太田雄貴Yuki Ota
photograph by
Sports Graphic Number
春。新たな気持ちで新生活をスタートさせた方も多いかと思います。
年度が替わり、さまざまなことがリスタートするこの時期、日本フェンシング協会も組織として固めるべきことを固め、方向性をより明確にしていこう、そう心がけながら、さまざまな施策に取り組んでいます。
まず、「いまさら何を?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、この4月、協会の理念を作り、ようやく着地できるところまで持ってくることができました。
実はこのことは、私が会長に就任したときから手を付けなければならない、と考えていた大きな課題でした。
昨年8月、右も左も分からない中で協会長となった私は、まず「そもそもフェンシングって一体なんだろう」といった、いわばこの競技の原点ともいえる部分について、歴史的背景から立ち戻って勉強しよう、と思い立ちました。
まずは、協会の理念を知っておかなければ……そこで協会のホームページなどを改めてじっくり眺めてみました。ところが、フェンシングの普及や東京五輪成功などは目標として書かれていますが、いわゆる理念のようなものは、しっかりと記されていませんでした。
なぜフェンシング協会に「理念」が必要なのか?
そこで11月ぐらいから、私と私の周辺の人々、フェンシング経験者もそうでない人も全く違う業界の方も、とにかくさまざまな価値観を持つメンバーを集めてブレインストーミングを何度も行いました。「ぼくたちにとって大切なビジョン、そして大切なミッションってなんだろう」と議論を積み重ねて、すり合わせていったのです。
なぜ、理念が必要なのか。
それは、私たちが「フェンシング」というスポーツを、社会の中にどう位置付けていきたいのか、そしてどんな価値観を創出していくかを理念という形で示さなければ、社会的存在にはなることができない、と考えたからです。