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隠居からバイエルン復帰で偉業達成。
ハインケスはコミュ力重視の名将だ。

posted2018/05/03 11:30

 
隠居からバイエルン復帰で偉業達成。ハインケスはコミュ力重視の名将だ。<Number Web> photograph by Getty Images

バイエルンをドイツ最強の座に再び君臨させたハインケス監督。その手腕は非常に尊い。

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遠藤孝輔

遠藤孝輔Kosuke Endo

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「隠居生活していた伝説の漁師が漁場にフラッと現われて、時化なのに次々と魚を釣り上げては絶品料理を作り出したようなもの」

 先日、ブンデスリーガのあるクラブでユース年代の育成に携わっている指導者が、食事の席でこんな例え話をしてくれた。伝説の漁師とはユップ・ハインケス監督。絶品料理とはバイエルンのことだ。

 今シーズン途中にドイツ王者の指揮官に再任した72歳は周知の通り、カルロ・アンチェロッティ前監督の下で競争力を落としていたチームを瞬く間に立て直し、見事ブンデスリーガ6連覇に導いた。2012-13シーズン限りで監督業を退き、自宅の庭仕事や愛犬の散歩をするのが日課だった老将が、いきなり現場に復帰して大仕事をやってのけたのだ。

 誰もが面食らったのは言うまでもない。

リティが即答、“コミュ力”の高さ。

 ハインケスの復帰初戦はブンデスリーガ第8節のフライブルク戦だった。それ以降の成績を改めて振り返ってみよう。4月30日現在、公式戦通算は32勝3分3敗(108得点・27失点)。1試合あたりの平均勝点は2.60に及ぶ。これはハインケスが前回バイエルンを率いた2011-12、2012-13シーズンの数値(2.43)を上回っている。

 繰り返しになるが、昨年9月のチャンピオンズリーグでパリSGに完敗(0-3)を喫し、国内での戦いぶりも不安定だったチームをほぼ無敵に仕上げた手腕には恐れ入る。

 実に4年以上も現場を離れていた老将が改めて示した美徳とは何か――。

 この疑問をピエール・リトバルスキー(現ヴォルフスブルク・チーフスカウト)にぶつけてみると、元西ドイツ代表の名ドリブラーは「選手とマンツーマンでコミュニケーションを取るのがとても上手」と即答した。

 戦術や采配、育成、勝負師としての手腕などではなく、コミュニケーション能力。選手としても指導者としてもトップレベルを経験してきたリトバルスキーが、こう答えたのにはもちろん理由がある。

【次ページ】 「人間的な部分をもっと考えるべき」

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