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ナダルやセリーナの関係者が続々と。
欧州テニスの最先端育成システム。
text by
フローラン・ダバディFlorent Dabadie
photograph byAFLO
posted2018/05/02 10:30
ナダル・アカデミーのオープニングセレモニーには永遠のライバル、ロジャー・フェデラーの姿も。
積極的にアジアツアーに参戦した理由。
スペインの東、地中海に浮かぶマヨルカ島東部の都市マナコルは人口4万人の小さな町です。世界一のテニス・アカデミーを目指す場所とはとても思えませんが、必要な条件は揃っています。隣のイビサ島が欧州観光のメッカである理由と同じく、マヨルカにも1年中暖かい日差しが降り注ぐのです。フロリダに負けない最高のテニス気候ですね。
敷地はバレンシアやバルセロナのアカデミーよりはるかに大きく、施設も指導者もトップ・クラス。言うまでもなく、今やアメリカよりスペインの指導者の方が世界的に高い評価を受けています。アメリカテニス協会の強化本部長もスペイン人ですね。
ボロテリー氏に似たオーラを醸し出すのはラファのコーチで叔父のトニー・ナダル。彼がアカデミーのボスです。トニーはナダルを史上最強のレッドクレー王者に育て上げるとともに、自身のテニス・アカデミーを建てるべきだとラファに訴えかけました。
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シーズン終盤となるとナダルは他の選手の倍は疲れているはずですが、積極的にアジアツアーに参戦していた理由はこれです。2016年に開校したナダル・アカデミーのPRに他なりません。莫大な人口を抱える中国とインドへの宣伝を徹底的に行いました。
アカデミーのコートはほとんどハード。
残念ながらトニー氏とナダル家は 日本の子供たちを視野に入れていなかったのか、大規模なPRは行いませんでした。そもそもいまの日本は、若い世代があまり海外へ出ようとしない時代。海外の育成システムに飛び込むとすれば、エリート・ジュニアだけなのでしょう。
彼らの多くはいまもIMGアカデミーを選ぶ傾向があります。実はナダル・アカデミーのほとんどのコートはレッドクレーではなくハードです。赤土王者らしくないと思われますが、ハードはATPとWTAツアーの主流のサーフェスだから仕方がありませんね。
北中米のテニス・ジュニアたちが大勢通うフロリダのIMGアカデミー、欧州のジュニアを目当てにするナダル・アカデミー。この二大勢力に加わった新たなプレーヤーが、フランスのムラトグルー・アカデミーです。