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ナダルやセリーナの関係者が続々と。
欧州テニスの最先端育成システム。
text by
フローラン・ダバディFlorent Dabadie
photograph byAFLO
posted2018/05/02 10:30
ナダル・アカデミーのオープニングセレモニーには永遠のライバル、ロジャー・フェデラーの姿も。
クレー34面、AI分析つきコートも。
2017年、同じ地中海の南仏ニース近くにオープンしたこの育成システムのカリスマ・オーナーは、女子テニス史上最強の選手であるセリーナ・ウイリアムズのコーチとして知られるパトリック・ムラトグルー。早くも欧州のスター選手が通う場所となり、モナコからノバク・ジョコビッチが、この春にはアンディ・マリーもここを拠点にしました。
クレーとハードコートが34面あるほか、 最先端AI分析システム付きのコートが8面、陸上トラックが4面、近未来的なジムや映画館も備えています。ナダル・アカデミー同様にキャンパスがあり、ジュニアたちは施設内で勉強できます。
ムラトグルーが勝負するのは教えの質です。そもそもフランスでは、テニス連盟がテニス・スクール(ジュニア以前の年齢の子供を指導)の指導者まで厳しく管理していますが、ムラトグルーはそのコーチたちの才能を生かすため、マンツーマンというアプローチを貫きます。テニスの技術と体力を指導するのは当たり前ですが、メンタル・トレーニングこそフランスの強みかもしれません。
「日本でオフィスを開きたい」とも。
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パトリック・ムラトグルーはトニー・ナダルと競って中国とインドの市場に進出し、現地スカウトも雇っています。親日家であるパトリックは、「日本でオフィスを開きたい」と私に伝えてきましたが、そのためには彼のアカデミーを本拠地にする日本選手をアンバサダーとしてリクルートする必要があります。
錦織と大坂なおみ、さらにダニエル太郎もフロリダにいて、杉田祐一はイタリアでトレーニングすることもある。ムラトグルーのアカデミーをもってしても、彼ら日本人トップ選手を勧誘する決め手には欠けるかもしれません。
テニス界の先駆者だったIMGアカデミーに立ち向かう、欧州の新勢力ナダルとムラトグルーのアカデミー。三つとも大きなビジネスを軸に、看板選手になれる次世代のエースも育ててあげなければなりません。その両方の目標を達成するには、やはりアジアのポテンシャルは無視できない。そのアジアのテニス先進国である日本では、TOKYO 2020をきっかけにテニス協会が育成システムの構造改革を進めるはずです。
日本の次のエリートの留学先はフロリダか、それとも地中海か。今やこの三大アカデミーがテニス界を牽引する時代です。