マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
鹿児島の松本晴は超センバツ級だ。
高校生左腕が少ない2018年の一推し。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byAFLO
posted2018/05/03 07:00
世代というのはプロ入りや進路にも大きく影響を与える。左腕が貴重な年、捕手が貴重な年、など傾向は様々だ。
先発の宮下も、ヨソなら立派なエース。
樟南高・先発の宮下尚哉(3年・166cm64kg・左投左打)だって、ヨソにいれば立派に“エース”で通る投げっぷりだ。
立ち上がり、いきなり鹿児島実業の4番・板越大剛(3年・180cm77kg・右投右打)に3ランを食らって、さらに2連打。
だいじょうぶかい? と見ていたら、2回から腕の振りが劇的に変わる。ストライクをとりたくて置きにいって、かえってリリースがブレてしまっていたのが一転、暴力的なまでのとんがった腕の振りに。小柄でも、死球お構いなしとばかりに右打者のふところを135キロ前後の速球で攻めに攻める。
後半6回まで2安打無失点。別人のような投げっぷりだったから「こりゃもうないかな……」と内心肩を落としていたら、7回から松本晴がリリーフのマウンドに上がった。
センバツにもいなかったレベルの松本晴。
誰に近いかと問われれば、甲子園でも奮投した花咲徳栄高・高橋昂也(現・広島)だ。
見た感じの体の線も、しっかり1歩あるいて腕を振るメカニズムも、その腕の振りの抜群のスピードも、タテの変化(松本→スライダー、高橋→フォーク)で打者の勢いをスッとはぐらかす間合いも、共通項がいくつも見える。
左腕特有の原因不明なアンバランスがないから、体重移動がムリなくなされて、打者寄りのポイントで気分よさそうに大きな円弧で振り抜けて、代わりバナの初球から「143」が出て、8回コールドで終わるまでの2イニング、ピッチャー返しのセンター前を1本打たれただけの3奪三振。
右足を高めに上げて、そこから左足にグッとためる感じのリズムが、自分のものになっているのがいい。タイミングは、自分だけの感覚なのだ。
ほぼ真上の角度から、クロスファイアーも右打者の外にも、どちらにもベストボールが投げられる。
ほめてばかりなのは、センバツから九州巡りまで、こういう力勝負もワザも使える骨っぽいサウスポーにずっと会いたかったからだ。