マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
鹿児島の松本晴は超センバツ級だ。
高校生左腕が少ない2018年の一推し。
posted2018/05/03 07:00
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
AFLO
「今年の高校生は候補が少ない」という気配は、実は去年、新チームの「秋季大会」の頃から見えていて、とりわけ「左腕」がいないことについてはみんなが口を揃えていた。
案の定……というかセンバツでも、即答で「松井裕樹!」と名前が挙がるような左腕は見当たらず、多くが推した増居翔太(彦根東)は間違いなく「好投手」ではあったが、誰もが唸るほどの剛腕とまではいかず、例年とは少々違った意味での「推し」だったというのが、ほんとのところだったろう。
「九州の左では、いちばんいいんじゃないですか」
昨秋、土地の人から聞いていたそんなひと言が、妙に耳に残っていた。
その左腕をじかにこの目で確かめるためだけに、鹿児島までやって来た。
なのに、鹿児島・樟南高の先発が松本晴(3年・180cm77kg・左投左打)じゃないから、高校野球の旅は面白い。
高校野球の春先にはよくあること。
基本、負けたらおしまいのトーナメントの世界。相手が強い試合の1つ前は2番手で……。よくある戦術、そしてよくある番狂わせのパターンである。
この時期16~7歳、ガタイは立派でも心身の中身はまだ“子ども”の高校生だ。体調の変化も、野球の調子のほうの変化もまだ日替わりで、お目当ての選手がグラウンドにも出てこない。
そんなことがよくあるのが、高校野球の「春先」ではある……が、そんなものわかりのいいことを言ってられる場合じゃない。
こっちは1500キロも向こうからやって来て、次はいつ来られるのかわかりゃしないのに……。
こういう場面での祈るような思いは、わかる人にはいたくわかるはずだ。