マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
大阪桐蔭級の打線に熊本で出会う。
九州学院で育つ3つの異なる才能。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byMasahiko Abe
posted2018/04/26 16:30
九州学院の川野涼多は、なんとも気になる選手だ。まだ2年だが、ここから存在感を増してくるのではないだろうか。
大阪桐蔭クラスの打線を作った九州学院。
熊本・九州学院といえば、昨秋のドラフトで1位の清宮幸太郎(早稲田実業高→日本ハム)を外した巨人、ヤクルト、楽天の3球団までもが「繰り上げ1位」に指名した村上宗隆(現・ヤクルト)を思い出す。
履正社高・安田尚憲(現・千葉ロッテ)を含めた高校生スラッガートリオの一角を占めた村上宗隆の前後を固めていた当時の下級生たちが、1年経ってたくましい3年生、2年生となって、九州屈指、いやおそらく全国でもトップクラスの強打線を形成してきた。
センバツにたとえてみれば、大阪桐蔭や東海大相模、智弁和歌山……打線9人をひとりひとりすべて伝えたいほど役者の揃った、間違いなく全国レベルの打線だ。
3人に絞ったが、この人選だってずいぶん悩んで時間がかかった。
昨年の今ごろは、4番・村上宗隆のひとつ前を打っていた工藤康紀(3年・181cm82kg・右投右打)。感心するのは、ライトを守るこの選手だ。
去年の春と夏、今回が3度目だが、いつもとにかく一生懸命。シートノックから手抜きがない。
野球がまじめだから、こういう打者は右方向を意識すれば、自然といい打球が飛ぶ。左腕の軟投派には、きちんとライト方面にライナーの打球を重ねていく。
体格抜群、70mほども糸をひくようなスローイングができるのだから、パワーだって高校生ばなれしているはずなのに、引っ張って放り込んでやろー! という“欲望”が表に出ない。
今日も痛烈なゴロとライナー性を3本、センターから右方向へ続け、打線のつながりをとぎらせなかった。
木村颯の“ドカン”は致命傷になる。
すごいな、コイツ! そう感動させてくれるのは、4番・木村颯左翼手(3年・182cm87kg・右投右打)のとんでもない長打力だ。
いつも打つわけじゃない。1試合に一度、4打席に1回の“ドカン!”。
劣勢の状況では、反撃のノロシとなり、優勢な展開では、試合を決めるとどめの一撃となる。
特に高校生レベルでは、ドカンと長いやつで突き放された時の敗北感は、腰からメリメリと力が抜けていくほどの致命傷となるのだ。