マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
大阪桐蔭級の打線に熊本で出会う。
九州学院で育つ3つの異なる才能。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byMasahiko Abe
posted2018/04/26 16:30
九州学院の川野涼多は、なんとも気になる選手だ。まだ2年だが、ここから存在感を増してくるのではないだろうか。
秀岳館のノックがなんで静かなんだ?
秀岳館のノックが、なんでこんなに静かなんだ? ノックを待ち受ける野手がノッカーを呼ぶ声がしない。打球を受けた野手に向かって一塁手が「さー来い」と送球を求める声がしない。
試合前のシートノックは、ボールのやり取りが出来ていることを確かめるだけが目的じゃない。それ以上に声のやり取り、言葉のやり取り、つまり「意志のやり取り」が確かに行われているのかどうか。確かめるべきは、そこのところであろう。
粛々と“パントマイム”のようなシートノックが終わって、試合が始まった。
もったいないなぁ……!
実戦でのプレーを見ても、繰り返し感じたものだ。試合になれば、ちゃんとやります! 野球はそんなに簡単なものじゃない。何より、懸命に勝とうとし、懸命に上手くなろうとしている「相手」がいる。
その気でやれば、今の2倍も3倍も上手くなれて、近い将来、最高のステージでその場を代表する存在にもなれそうな逸材の卵が何人も目の前にいる。
ほんとに、もったいない。
DeNAの宮本秀明は秀岳館の先輩。
チームには、少し前に絶好の「お手本」がいた。
現DeNAの宮本秀明内野手。
2年生の時のショートも上手かったが、3年に上がってサードにまわってからも、実にキビキビとメリハリの効いたフィールディングで、見るたびに、上手いなあ……と感心したものだ。
飛んでくる打球、送球に、まず“足”から反応していた元気者のその先輩は、卒業して社会人野球の名門・パナソニックで3年鍛え、昨秋のドラフトでプロへ進んだ。7位という下位指名ながら、すでに一軍の守備、代走に起用されているから選手たちも知っているだろうが、秀岳館のわずか4年先輩なのだ。
これぐらいのところで安心してちゃいけない。これぐらいのところで満足してちゃ、もったいない。
「夏」の一変を、心から期待している。