マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
大阪桐蔭級の打線に熊本で出会う。
九州学院で育つ3つの異なる才能。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byMasahiko Abe
posted2018/04/26 16:30
九州学院の川野涼多は、なんとも気になる選手だ。まだ2年だが、ここから存在感を増してくるのではないだろうか。
周囲に全く流されない泰然自若の2年生。
魅力でいったら、この日九州学院のリードオフマンをつとめた遊撃手・川野涼多(2年・178cm68kg・右投右打)がとびきりだ。
1つ前の試合の後半を、私は三塁側ダグアウト上方のスタンドから見ていた。そこへ次の試合に臨む九州学院の選手たちがやってきて、隣り合うようにして観戦していた。
7回が終わると、ほかの選手たちはみんな、試合終了に備えてダグアウト裏に移動して行ったのに、ただ1人私の隣りに残っていたのが、この2年生ショートだった。
ほかの選手たちがいっせいに移動を始めても、まったく気にすることなく、じっとグラウンドの試合展開を見つめ続け、ゲームセットになると、「う~ん……」と小さく唸り、「よっし!」とひと声つぶやいて、グラウンドに下りて行った。
まさに、泰然自若。自分だけの世界の中で試合前の時間を過ごし、闘いの場に向かっていった新2年生の「実戦」がどうだったかというと、これが「お見事!」のひと言だったから、やっぱり九州にやってきてよかった。
今年の1位候補、小園に通じる存在感。
変化球にも頭の動かないスイング。ボールの遅い投手相手にも、燃え過ぎずに呼び込んで痛烈ピッチャー返し。低めの難しいコースを軽く振り抜いてライトポール下99mへ目の覚めるようなライナー。
三遊間深いところから一塁へはダイレクト、二塁へは逆シングルからボディバランス抜群のストライクスロー。
前傾姿勢を崩さない盗塁スタートからも、体幹の強靭さがうかがわれ、スピードだって、50m6秒をきる。
今年のドラフトの1位候補にも挙げられる報徳学園・小園海斗(3年・178cm73kg・右投左打)が、昨年の今ごろ、センバツの甲子園であばれていた頃とそんなに違ってないんじゃないか。
「野球的精神年齢」がこんなに高いショートが2年生でいるのだから、「春の九州高校野球」はやっぱりこたえられない。