サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
協会、ハリル、そして選手たち。
解任劇には三者三様の責任がある。
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byGetty Images
posted2018/04/25 07:00
ハリルホジッチ氏の記者会見で何が語られるのか。日本のサッカー界がその日を戦々恐々と待っている。
西野氏の中にも不信感があったのでは?
西野朗新監督の就任理由に「(前監督への)忠誠心」を田嶋会長はあげたが、それも不可解だ。
昨年11月の欧州遠征でブラジルに大敗した直後、西野技術委員長(当時)は「相手は100%の力を発揮してはいなかった」と語っている。批判的な報道に怒りを露わにしていたハリルホジッチ氏に寄り添ったコメントとは思えない。
3月のベルギー遠征後も「攻撃面での連動性がなかった」と厳しい口調で話す西野氏の言葉を覚えている。思わず記者が「現体制で行くのか?」と問うほどだった(そのときは、続投を明言した)。
ハリルホジッチ体制への疑問は、西野新監督の胸中にもあったと考えられる。
「最初のミーティングで、ブラジル大会でのボールロストの映像を何度も見た。そこが日本の弱さのひとつだという監督の意思が伝わってきた」
岡崎慎司は以前、スタート直後のハリルホジッチ体制についてそう振り返っている。不用意にボールを失ってしまうことが問題だと岡崎自身も感じていたと。
デュエルも縦に速いサッカーも……。
協会サイドに問題があったことは明白だが、ハリルホジッチ監督にも問題がなかったわけではない。
たとえば、「デュエル」という言葉がある。
「球際の強さが大前提」であることは、今やサッカー界の常識だ。だから、ハリルホジッチ氏が発信した「デュエル」は、どんなスタイルであっても攻守にわたり重要である。
そして球際での強さは、日本と世界との大きな違いでもある。身体能力の差を組織でカバーする日本の守備文化は、世界の舞台では限界が露呈する。エースを3人で囲むような守備では数的不利な場所が確実に生まれ、ワンプレーで剥がされると途端に大ピンチを招く。
「縦に速いサッカー」も、近代サッカーにおいて重要な要素だ。素早い攻守の切り替え、高い位置でボールを奪ってのショートカウンターなど、縦にボールを運ぶのはゴールを奪ううえで大切な意識なのだから。