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協会、ハリル、そして選手たち。
解任劇には三者三様の責任がある。
posted2018/04/25 07:00
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph by
Getty Images
ハリルホジッチ前日本代表監督の解任発表から10日あまりが過ぎた。
インターネットでは、今なお、解任に対して異を唱える声が多い。
来日したハリルホジッチ氏の涙の会見で、さらにその声は高まっただろう。
解任発表会見での田嶋幸三会長の言葉や態度には、たしかに問題があった。
彼の独断をすんなり受け取るのは、当事者でなくても難しい。
「『紙一枚でも構わないんだ』と言われたが、私は礼を尽くして直接言うことを選んだ」
「(理由を)羅列するつもりはなかった。事実として、契約を解除すると伝えた」
「辞めていただく方に、その人を傷つけるというより、私たちはそこでしっかりと線を引いたことを伝えるのが大事だと思い、伝えた」
田嶋会長は会見で、ハリルホジッチ氏に解任を告げる会合についてそう説明している。「誠意」という言葉も繰り返したが、受け取った側がそう感じていないものを「誠意」と呼ぶことはできない。ハリルホジッチ氏が納得できないというのは当然だろう。
いろいろな人に相談したというが、技術委員会に諮ったわけではなく、議論は行われていない。
「サポート」という言葉を強調。
解任理由についても、「総合的に判断した」という結論にいたる前に「選手とのコミュニケーションや信頼関係が多少薄れてきた」と話し、さまざまな憶測を招いている。
組織の長として説明責任が果たされていないのも当然だが、説明方法や言葉を選ぶ能力の無さも気になる。当事者には詳細な解任理由を伝え、会見では控え目な表現に抑える方法もあったのではないだろうか。たとえば成績不振だけを理由にしてもよかったのだから。
技術委員会、西野朗新監督への評価も納得感がない。
「技術委員会は代表チームを全力でサポートしてきた」と会長は繰り返すが、「サポート」という言葉に、あえて使っている印象が残った。
技術委員会が「代表チームのサポート組織」だとしたら、監督を任命し、評価し、運営するのは誰なのか。
本来なら、それこそが技術委員会の仕事だろう。任命時点ではまだ就任していなかったとはいえ、代表チームの運営責任がある技術委員長を2年間務めた当事者が新監督に就任する。
その人事が先にあり、責任回避のために「サポート」を強調していた気がしてならない。