欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
相手にボールを触らせずリーグ制覇。
ペップとマンCは理想形へ突き進む。
text by
粕谷秀樹Hideki Kasuya
photograph byGetty Images
posted2018/04/21 11:30
機能美と連動性を突き詰めたマンチェスター・シティとグアルディオラ監督。念願のタイトル獲得となった。
モウリーニョは嫉妬の発言をしていたが。
たしかに非常識な金額ではあるが、シティはフェラン・ソリアーノ副会長、チキ・ベギリスタイン強化部長、グアルディオラの3人がシーズン中からミーティングを重ね、一枚岩の補強プランを進めてきた。GKとサイドバックを入れ替えた昨夏のプランも、上層部と現場の意思は一致していた。
現場の意見がまったく反映されないチェルシーとは雲泥の差、といっていいだろう。いや、チェルシーだけではなく、近年は現場の意見が完全に無視されるケースも増えてきた。クラブ規模の大小にかかわらず、プレミアリーグはシティの補強戦略から多くを学ばなくてはならない。
「ヤツらはカネを持っているからな」というモウリーニョ監督(ユナイテッド)の発言は嫉妬だ。みっともない。金額ではなく、使い方を参考にすべきなのだが……。
ダビド・シルバはペップにも不可欠。
グアルディオラ体制が発足する以前から、攻撃のタクトを握っていたダビド・シルバの存在も見逃せない。
今シーズンで8年目。守備と規律重視のロベルト・マンチーニ、選手の個性と心中したマヌエル・ペジェグリーニと、タイプの異なる監督のもとで確固たる地位を築き、グアルディオラのチームでも攻撃のリズムを整えるうえで必要不可欠の存在となった。
着任後、急ピッチで理想を実現できるチームを創ってきた名将も、シルバに限ってはノータッチだ。定位置を争うライバルを招いて危機感をあおるような真似はせず、全幅の信頼を寄せている。明晰なフットボール頭脳を持ち、私生活もプロの鑑というべきシルバに、余計な刺激は不要と考えたに違いない。
左サイドのハーフポジションに位置したかと思えば、次の瞬間には中央に移動し、精度の高いスルーパスで決定機を演出する。ラヒーム・スターリング、レロイ・サネ、ガブリエル・ジェズスが前に急ぎすぎたときは、絶妙な間合いを図る緩急の機転。戦況を冷静に読み取るシルバがいたからこそ、グアルディオラは理想の構築に着手できたわけであり、前述した若手FWもそろって得点を重ねることができたのではないだろうか。