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急造の西野ジャパンも学ぶべき!?
豪代表ファンマルバイクの超合理主義。
posted2018/04/22 09:00
text by
ティエリー・マルシャンThierry Marchand
photograph by
Alain Mounic
『フランス・フットボール』誌4月3日発売号は、巻末の「ツール・ド・モンド(世界レポート)」でフランスがロシアワールドカップで最初に対戦するオーストラリア代表の監督に就任したベルト・ファンマルバイクを取り上げている。
サウジアラビア代表を12年ぶりのワールドカップ本大会出場に導きながら、ファンマルバイクはアジア最終予選後に監督を辞任した。
思い起こすのは最終戦となったジェッダでの日本戦を前にした会見で、サウジのメディアに対し嫌悪感を隠そうともせず質問に答えていた彼の姿である。それは重圧やプレッシャーとはまったく別の感情であるように、筆者(田村)には感じられた。
この人は、この国で仕事をするのが嫌でたまらないのだろうな――そんな思いがストレートに伝わって来る表情であり受け答えであった。
そのファンマルバイクが、時間を経ずしてオーストラリア代表監督に就任した。完全な横滑りは、彼自身のサッカーへの情熱はいささかも衰えていないことを示している。
ティエリー・マルシャン記者が伝えるレポートは、そうしたファンマルバイクの内面にまでは迫っていない。彼の監督としての資質や性向、母国オランダでの評価、オーストラリア代表でのノルマなど、全般的な分析に留まってはいるが、それでもオーストラリアが彼に何を期待してワールドカップに臨むかを理解する一助にはなっている。目標は2006年にフース・ヒディンクが成し遂げたベスト16を上回ることである。
監修:田村修一
オランダ人監督には2つの種類がある。
オランダには2種類の監督が存在する。
ひとつはロマンティックな理想家たち。
スペクタクルな攻撃的スタイルを志向する、ヨハン・クライフの系譜に連なる理論にも優れた監督たちである。フランク・ライカールトやダニー・ブリント、マルコ・ファンバステン、デニス・ベルカンプ、クーマン兄弟、ヨン・ファントシップらがそれにあたる。
もうひとつが内容よりも結果を重視する実践的な監督たちである。
彼らもダイナミックな攻撃を志向するのは同様だが、より現実的かつ合目的的に結果を目指す。このグループを代表するのがフース・ヒディンクとベルト・ファンマルバイクである。
テクニックでは見劣りのするオーストラリアが、彼らに代表チームの命運を託すのは驚くに当たらない。
ヒディンクは'06年ワールドカップで“サッカールー(オーストラリア代表の愛称)”をベスト16に導いた。
2カ月前に代表監督に就任したファンマルバイクも、ヒディンクと同じ哲学を持ち、同じ方法論を踏襲しているのである。