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急造の西野ジャパンも学ぶべき!?
豪代表ファンマルバイクの超合理主義。
text by
ティエリー・マルシャンThierry Marchand
photograph byAlain Mounic
posted2018/04/22 09:00
サウジ代表のW杯出場決定後、本大会へ向けての代表監督を続ける諸条件に納得がいかず、自ら契約延長を拒否したファンマルバイク。
目指すはマンチェスター・シティのサッカー。
スペインとの南アフリカワールドカップ決勝では、ファンマルバイクのオランダはそのフィジカルで守備的なプレーで世界を失望させ、ヨハン・クライフの怒りを買った。
試合で脚光を浴びたのは、ナイジェル・デヨングがシャビ・アロンソに対して放ったカンフーキックのみだった。
とはいえファンマルバイクは、決して破壊的なプレーを好んでいるわけではない。彼が指揮したサウジアラビアは、アジア最終予選では日本と並んでグループ最多得点を記録した。
スペースを作ってボールを素早く動かし、オフザボールの動きを重視する。模範とするのはグアルディオラのマンチェスター・シティである。
つまり彼は理想に凝り固まった教条主義者ではなく、選手の能力とスタイルに合わせた柔軟なアイディアを採用する実践家なのである。それは同時にフィジカルの強さに最大の特徴があり、技術面ではさほど見るべきところがないオーストラリアでは、とり得るオプションが限定されかねないことも意味する。
選手が完全に理解するまで繰り返し説明する監督。
彼は合理的かつ体系的にものごとを考え実践する。
選手に対しても、彼らの頭の中に深く刻み込まれるまで繰り返して説明する。求めるのはディフェンダーも攻撃に加わり、アタッカーも必要に応じて後退すること――攻守の流動的な融合であり、ポゼッションを志向していくことである。その点ではトータルフットボールの流れを汲んでいるともいえる。
クライフをはじめとするリヌス・ミケルス一派と彼を隔てるのは、プレーの価値観である。
ファンマルバイクにとっては、スペクタクルやプレーの楽しさは重要ではない。価値を置くのはあくまでもプレーそのものである。