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ベンゲル、退任に向けた屈辱人事?
アーセナルが剥奪した補強の権限。
posted2018/04/07 11:00
text by
粕谷秀樹Hideki Kasuya
photograph by
Getty Images
第32節を終了した時点で首位マンチェスター・シティとは33ポイント差。背中すら見えない。4位トッテナムとも13ポイント差。チャンピオンズリーグの出場権も視界から消えた。ヨーロッパリーグではベスト8に進出し、CSKAモスクワとの第1戦で4-1の勝利を収めたが、この先アトレティコ・マドリーと対戦したらひとたまりもない。
アーセナルの2017-18シーズンは終わった。
決して意外な成績ではない。アーセン・ベンゲル監督の慎重すぎる補強プランは、高騰化する一方の移籍市場で後れをとるばかりだった。競合を避けたいがために適正価格でも出し渋った結果、メインターゲットを取り逃がすケースも頻繁に起きている。当然、選手の質は低下していく。
しかも、他クラブに比べると給与の基本設定が低い。今年の冬、マンチェスター・ユナイテッドに去ったアレクシス・サンチェスだけではなく、過去にティエリー・アンリ、アシュリー・コール、ロビン・ファンペルシといった名選手が次々と退団していった理由の1つにも、待遇面の不満が挙げられている。
週給の大幅ダウンを提示されたジャック・ウィルシャーも、シーズン終了後に新天地を求める公算が非常に大きい。
「マネードーピング」対策に後れを取った。
莫大な補強費を有するマンチェスターの2チームはもちろん、アーセナルと同等のリバプールでさえ、移籍市場で積極的な動きを見せている。にも関わらず、ベンゲルは「マネードーピング」と称して天文学的な数字が飛び交う現状を批判する以外に、何の手も打たなかった。クラブを経営するうえで、金銭的な抑制は全面否定できないものの、強化面ではあまりにも消極的すぎた。
さらに、主力のコンディションに委ねるだけのゲームプランも、十年一日のごとしで古臭い。ライバルがユナイテッドとチェルシー、リバプールに限られた時代に通用した手法を、いまだに用いている。
シティのジョゼップ・グアルディオラ、トッテナムのマウリシオ・ポチェッティーノ両監督は試合ごと、いや試合中でもシステム変更を可能にするチームを創り上げたが、アーセナルは柔軟性を欠いたままだ。
フットボールを取り囲む状況が激変したにもかかわらず、ベンゲルの時計は進んでいない。懸案とされてきた守備的MFとセンターバックの補強を疎かにした事実も含め、永すぎたサイクルの終焉が急速に近づいてきたようだ。