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ベンゲル、退任に向けた屈辱人事?
アーセナルが剥奪した補強の権限。
text by
粕谷秀樹Hideki Kasuya
photograph byGetty Images
posted2018/04/07 11:00
アーセナルのエンブレムのために指揮を執り続けたベンゲル監督。しかし別れの時は本当に近づいている。
マンUのようにモイーズ人選は避けたいが。
こんにちのアーセナルは、ベンゲルによって築かれたものだ。身の振り方はクラブの都合やサポーターの感情ではなく、フットボール史上に名を残す名将のプライドを配慮し、できるだけ彼の意向に沿うものであってほしい。
今シーズン終了後、十中八九ベンゲルは退任する。ミズリンタットとサンジェイーの入閣はその布石であり。彼らを中心に新監督の人選を進めなければならない。5年前、ユナイテッドはサー・アレックス・ファーガソン退任後、デイビッド・モイーズという絶望的にバカげた人選で混乱を招いたが、ベンゲルの後任を慎重、かつ急ピッチに進める作業は簡単ではない。
ミズリンタットの加入に伴い、ドルトムントのトーマス・トゥヘル元監督を招聘する、との噂がまことしやかに囁かれ始めている。しかし、両者は補強プランを巡って対立した過去があり、いまだ和解には至っていないという。
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しかも「トゥヘルはパリ・サンジェルマンと合意済み」との情報が聞こえてきた。発信源はバイエルンCEOのカールハインツ・ルンメニゲである。彼らもトゥヘル獲得にはご執心だったのだが……。バイエルンがあきらめたのだから、パリSGは厚待遇を約束したと考えていいだろう。となると、アーセナルは経済力で勝負にならない。
ルイス・エンリケ招聘もありえる?
サンジェイーとバルセロナの関係から推察するのなら、ルイス・エンリケの招聘もあり得る話だ。アントニオ・コンテの去就が微妙のチェルシー次期監督の最有力候補とも言われるが、L・エンリケの志向はアクション型だ。チェルシーよりはアーセナルの方が適応しやすいはずだ。
また、リオネル・メッシ、L・スアレスとの権力争いに疲弊したバルセロナとは異なり、アーセナルには政治力を駆使するタイプの選手がいない。ベンゲルが築いたチームカラーを踏まえても、L・エンリケこそが新監督にふさわしい人材とも考えられる。
中心軸から大きな後れをとったいま、アーセナルにはドラスティックな人事が求められている。ベンゲル体制の幕引きはダメージも少なくないとはいえ、現状維持はより大きな混乱とマイナスを招くだけだ。本来あるべきポジションへ──。アーセナルはリ・スタートのタイミングを誤ってはならない。