バスケットボールPRESSBACK NUMBER
Bリーグで最強に熱いHCは東京に。
ルカ・パヴィチェヴィッチの素顔。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byB.LEAGUE
posted2018/03/23 10:30
今年1月1日の試合後、相手の千葉ジェッツの富樫勇樹とハグをするルカ・パヴィチェヴィッチHC。
記者会見前にHC同士でディスカッション。
――あの試合のあと、記者会見が始まるまでに5分以上も、千葉の大野篤史HCと話し込んでいた姿が強く印象に残っていますが、どんな話を?
「あの試合では残り30秒で千葉の富樫(勇樹)選手が得点を決めて、3点差から1点差になりました(アルバルクが57-56でリード)。そして我々の攻撃になるタイミングで、タイムアウトを取った。その局面について話をしました」
――そのときに何を考えたのでしょう?
「千葉がすぐにファウルをしかけてくるのか、それともギリギリまで守備で粘って、我々のミスを誘うのか、2つのパターンが予想できたので、それぞれのケースでプレーについて指示しました。ポイントガードの安藤誓哉には『ボールをキープして、千葉がどういう手を打ってくるのかを見る。そして、すぐにファウルをしてこないのであれば、24秒クロックのギリギリまで粘る。最低でもシュートをリングに当てれば、クロックはリセットされるし、相手にボールが渡っても残り数秒になるから』と伝えました」
――実際に安藤選手は24秒クロックの終わるギリギリのタイミングでシュートを放ちました。外れたものの、アレックス・カーク選手がそのリバウンドを残り4秒でもぎとり、そのままボールをキープして試合は終わりましたね。
「あのような(1プレーが勝敗を分ける)局面では、まずHCが正しい選択をしないといけない。本当に厳しい局面だったので、(記者会見の前に)廊下で大野HCと、その判断についてディスカッションしたのです」
――大野HCも敗れた悔しさを口にしたものの、レベルの高い試合をしたことについては認めていました。会場にいたファンからもバスケの試合としてはロースコアの57-56で終わったにもかかわらず、楽しい試合だったという声が聞かれましたが……。
「ロースコアだったのは、どちらのチームのディフェンスもインテンシティ(強度)が高かったからです。ただ、その中で良いオフェンスも見られましたし、シュートが入らなかっただけ。あれは『美しい試合』でした」
日本のバスケを発展させたいからこそ。
ヨーロッパのバスケットボール界では、このように試合後にHC同士がディスカッションをするケースはあまりないとルカは話す。世界のスポーツ界で似たようなケースとして想起されるのが、イングランドのサッカー界だ。
サッカーが文化として成立しているあの国では、試合後にホームチームの監督がアウェーチームの指揮官を監督室にまねいて、ワインをあけながら、サッカー談義をするのがならわしになっている。紳士の国らしい伝統だが、そうした積み重ねが競技のレベルの向上や、文化としての発展につながっているのは間違いない。
――試合後にそうやって相手チームのHCとディスカッションをするのは、バスケットボールの魅力に触れるという個人的な目的のためでしょうか? それとも日本のバスケットボール界のレベルを上げたいと願っているのでしょうか?
「日本のバスケットボールのレベルを発展させたいという想いがまず、あります。あの試合の後には、大野HCから『ルカさんが自分の立場だったら、どうしましたか?』とも聞かれました。ただ、それは大野HCだけではなく、滋賀(レイクスターズ)や(サンロッカーズ)渋谷のHCと、色々なHCと話します。何を話すのか事前に決めてはおらず、試合内容やリーグの近況についても話すようにします」