Before The GameBACK NUMBER
本物の名将は、選手を私物化しない。~バスケ・能代工業で全国を33度制した加藤廣志~
text by
藤島大Dai Fujishima
photograph byKYODO
posted2018/03/25 17:00
1983年3月29日、春の選抜大会で優勝した加藤廣志と能代工バスケ部の選手たち。
まれなる表現者、友川カズキに『明るい耳』という曲がある。8年前にリリースされたアルバム、『青いアイスピック』に収められている。
〈まぶた閉じて友は草木の中に居る/雨の日にはやおら歌い…〉
そんな詞が進むと、唐突のように、次の一節が飛び出す。語尾に「!」がつく迫力。いっぺん聴いたら忘れられぬ叫び声とともに。
〈先生、加藤先生〉
このときすでに還暦の歌手の魂に、浪人後入学の高校1年、16歳の春から「先生」は棲み続ける。
加藤廣志。能代工業高校バスケットボール部を率いて全国制覇が実に33度、「低さ」の鬼であった名将は、いちばん高い場所へとついに招かれた。3月4日に死去。80歳だった。