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Bリーグ琉球・佐々宜央HCの流儀。
33歳で指導者歴15年、異色の経歴。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byB.LEAGUE
posted2018/03/12 17:00
陸川章、小野秀二、アンタナス・シレイカ、トーマス・ウィスマン、長谷川健志、ルカ・パヴィチェヴィッチら錚々たるHCのもとで経験を積んだ。
ACの経験は、HCとしての判断で生きる。
ACでありながら、通訳も務める。アメリカで現地校に通っていた経験が生きたわけだが、当然ながらHCとの関係は通常のAC以上に密なものになる。アメリカでの日々があったからこそバスケットボール観を養ったし、ACとして培った経験は、今置かれているHCとしての判断基準にも生きる。
ACはHC以上に、選手と直接コミュニケーションを取る機会が多い。
試合に出られない選手は何を考えているのか。
田臥勇太のような実績ある選手は、どのような指示を受けると気持ちよくプレーできるのか。
こういったことを知れたことは今につながっている。また局面ごとにどういう手を打てば良いのか、どういう指示をすれば良いのか、といった指導のポイントもつかめた。
「僕、『察知力』が好きだったんです」
琉球の選手たちの声を聞いて興味深かったのは、佐々がデータに頼りすぎないということだ。
データは、相手と自分たちの特徴をわかりやすく理解するためのツールである。
しかし、選手としてトップレベルの経験がない指揮官は、データに依存しがちだ。HCの頭の中にある戦術を分かりやすくするはずのデータが、気づけば自身の拠りどころになっている。それを選手に見透かされてしまえば、求心力を失ってしまう。
人は数字では動かない。人は気持ちで動くのだ。
同じような年代やキャリアの指導者が陥りがちなミスを、佐々が犯さないのには理由がある。本人が挙げたのは、意外なアスリートの著書だった。
「僕、あの本が好きだったんですよね。(中村俊輔著の)『察知力』です。察することって、大事じゃないですか。自分も選手も、1つの組織の中でやっているわけですから。何を必要とされるのかを察しながら、やらないと絶対に生きていけないですよね」
そんな佐々の考えがよく表れていた試合が、第2節・名古屋ダイヤモンドドルフィンズとの2戦目だった。レギュラーシーズンの3分の2にあたる40試合を終えた時点で、昨シーズンと比べて琉球は1試合あたりの平均失点が10点以上減っている。今シーズンは守備の整備に熱量を注いだが、開幕直後の名古屋戦では守備のルールが遂行できず、終始追いかける展開だった。