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バスケ男子代表のHCが語る仕事論。
選ぶ人か、鍛える人か、勝負師か。 

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ミムラユウスケ

ミムラユウスケYusuke Mimura

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photograph byNaoya Sanuki

posted2018/02/21 16:30

バスケ男子代表のHCが語る仕事論。選ぶ人か、鍛える人か、勝負師か。<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

「ジャパンスタイルのバスケを構築する」とラマスHCは常々話す。日本のバスケでアジア地区1次予選を突破できるか。

競争して自分のテリトリーを守れ。

 もう1人のACである佐古賢一は「エルマンとラマスの間には深い絆があるんですよね」と話しているが、エルマンが選手たちを叱責した意義を、ラマスはこう説いている。

「代表で大事なのは、勝つという気持ちを植えつけること。そのためには“競争して、自分のテリトリーを守る”という考えを持つべきです。トップレベルで勝つためにはそういう思考が必要だし、メッセージとして活を入れたんです」

 そうしたメッセージは選手側も感じ取っている。

 例えば篠山竜青である。

 篠山は富樫勇樹の負傷もあり、22日の試合で先発が濃厚だ。前述した1対1の練習など、シーズン中にはあまりないメニューが熊本合宿で組まれたことについて、こう感じていた。

「1対1の練習は、本当に基本的なもの。目の前の相手に勝つというハングリーな姿勢を見せないと生き残れない、そういった意味が込められているかもしれませんね。僕の所属する川崎(ブレイブサンダース)でも、シーズン中にこういった練習はほとんどないです。もちろんチームとしてまとまることは大事だけど、(ベンチメンバーの)12人に残るために激しい競争をする、それがチームをレベルアップさせる要因になると考えているからなのかなと思います」

選ぶ人、かつトレーニングさせる人。

 ラマスが短期的な強化と中長期的な強化の両方を追求しているのは、言葉使いからもうかがえる。

 彼の母国語であるスペイン語には、監督やHCを指す言葉が2種類ある。

 代表チームの指揮官は一般的に「seleccionador」と呼ばれる。字面を見てもわかるかもしれないが「選ぶ人」という意味である。

 一方で、クラブチームの指揮官については「entrenador」と呼ばれる。これは「練習する」という意味の「entrenar」が語源で「トレーニングをさせる人」という意味だ。

 ラマスは代表のHCとして、選手を選抜するという意識、つまり「seleccionador」として行動しているのか。そう問うたとき、彼はこう答えた。

「いや、そうではないです。確かにまず『seleccionador』という意識は、あります。各クラブから代表選手を選んでいくわけですから。ただ、彼らが代表のユニフォームを着たら、そこからの私は『entrenador』という意識でやっていますよ。選手たちを鍛えていかないといけない」

【次ページ】 試合中には「勝負師」になる。

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フリオ・ラマス
篠山竜青

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