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酒井宏樹、マルセイユで強者となれ。
フランス代表に意見、左SBも余裕。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byGetty Images
posted2018/02/21 10:30
日本代表でもネイマールらと堂々マッチアップするなど、酒井宏樹の成長曲線は明らかに急勾配を描いている。
チームの王様であるパイエにも臆せず。
酒井が見せたアクションのなかで、象徴的な場面があった。
前半40分過ぎ、GKマンダンダが負傷して治療中のこと。酒井はCBと話し合っていた。時間にして1分程度だ。それが終わると、今度は左MFパイエのもとに向かっていった。10番を背負うキャプテン、そして現役フランス代表に何を伝えたのか。
「高い位置を取る相手SBに対して、うちのサイドハーフがついていくべきかどうかの話でした。CBの2人も最初は『ついていかせるべき』と言っていたのですが、最終ラインは1人余っていて、そこでスライドできるので、あの状況では守りきれると思い、パイエにはそう伝えました」
その上で、チームの王様であるパイエには、こんな話をした。
「相手SBには無理してついていかなくていいので。そのかわり、中に出される相手の縦パスのコースだけは、絶対に切って欲しいんだ」
酒井は真意をこう解説する。
「サイドハーフの選手だったら、出来るだけ守備はしたくないですし、攻撃をしたいと思うので。それに、試合の(勝負所となる)最後の10分くらいに力をちょっと温存しておいてもらいたい思いもあるんです」
年下も年上も関係ないスタイル。
自分の周りにいるポジションの選手が、いかに快適にプレーできるかを考える。それとともに、チームが勝つために必要だと思うことはしっかりと伝える。
日本代表であれば、久保裕也や浅野拓磨らにもそう接してきた。年下だからといって、頭ごなしに言うわけではない。かといって、マルセイユでは年上かつチームの中心であるパイエに臆することもない。それが酒井のスタイルだ。
一般的には、叱りつけるようなタイプのDFが人気があるのかもしれない。でも、それだけがサッカーの全てではないし、10年後や20年後には流れが変わっていることもあり得る。
日本代表での戦いに限らず、酒井がたくましさを増しているのは、そんなところに表れていた。