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稲葉篤紀「五輪はWBCと全然違う」
侍ジャパンへ、新指揮官の忠告。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byIchisei Hiramatsu
posted2018/02/14 07:00
ヤクルトや日本ハムでの日本一を知る稲葉監督。国際大会では勝負への厳しさを貫く。
「金メダルしか僕は目指していない」
野球にとっては3大会、12年ぶりの五輪復帰となる大会。地元開催ということもあり、メダルへの期待が高まることは百も承知している。
「とにかく金メダルを取る。そこしか僕は目指していません」
稲葉監督は言い切る。
そのために大会までの3年間で、優勝できるチームを作り上げるのが使命となる。
五輪本番は7月末から8月上旬で、シーズン真っ最中のメジャーリーガーの参加はほぼ難しいのが現状だ。国内のトッププロが参加するのは日本と韓国、台湾のアジアのチームだけ。他の地域の代表はアマチュアと地元プロの混成チームで、一昨年に行なわれた国際大会のプレミア12のときの各国代表と似たようなチームになる公算が大きい。
ただその一方、米国はアマチュアのトップ選手とシーズン真っ盛りの3Aの選手の混成チームになる可能性が高く、そうなると金メダルという目標を達成するには、WBCで日本が苦しんだ速くて手元で大きく動く球への対応も不可欠になってくるだろう。
WBCでは例えばDeNAの筒香嘉智外野手や巨人の坂本勇人内野手、西武の秋山翔吾外野手などポイントを後ろにしている打者は比較的、すぐに順応できた。一方で日本ハムの中田翔内野手やヤクルトの山田哲人内野手など、大きく足を上げてタイミングを取るタイプの打者は苦しむ傾向にあった。そうした選手の特性を見て、いかに選抜し、起用していくかも代表監督の目が問われるところになるわけだ。
1人でも多く対応力や順応性を見たい。
「僕は選手として3度、その後は小久保監督の下でコーチもやらせていただいて、国際経験を積ませていただいた。そこで対応能力というのが非常に大事だなと思いました。小久保監督はとにかく選手を信頼して使い続け経験をさせた。そうしてチームを1つにしてきた。これも僕は非常に良かったと思いますし、今回のWBCはチームとしてもすごくいいチームだったと思います。ただ……」
最後まで勝ち切るためには、国内の実績より対応能力の高さが重要になると考える。
「万能系というか、初めてのピッチャーに対してもアジャストできる選手というのはいるんです。だから僕も3年間かけて1人でも多くの選手に代表に入ってもらって、対応力とか、そういう順応性を見てみたいなとは思っています」
その最初の一歩が、「アジアプロ野球チャンピオンシップ2017」だった。