マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
広島の二軍キャンプは地味でも熱い。
中村、桑原、木村、赤松が土の上で。
posted2018/02/11 11:30
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Kyodo News
宮崎・日南の広島カープの春季キャンプ。
クライマックスシリーズでは不覚をとったものの、2年連続セ・リーグ優勝を遂げたカープだけに、“全身・赤”みたいなファンが朝からたくさん集まって、去年までは球場前の駐車場にとめられた私たち報道の車も、今年からは「駐車証」がないととめさせてもらえなくなった。
報道もファンも、強くなると人がたくさん集まるということだ。
日南キャンプは、一軍が町の中にある「天福球場」を使い、二軍は郊外の「東光寺球場」を使って行われている。
一軍の天福球場も、日曜には内野スタンドがいっぱいになるほどでそれは華やかなものだが、二軍の東光寺も、今年はゴールデンルーキー・中村奨成(捕手・広陵高)がこっちなので、例年になく毎日200人ほどの熱心なファンが詰め掛けている。
守備練習。若い選手たちがそれぞれのポジションについている。
ショートを守る選手の動きを見ていて、あれっ……と思った。ちょっと前に一軍の“天福”で見ていた田中広輔遊撃手のアクションにそっくりだ。
守っていたのは、今季4年目の桑原樹(常葉学園菊川高)。180センチの大柄の遊撃手なのに、171センチの田中広輔と同じぐらいに“小さく”見える。
内野手が実際の体格より小さく見えるのは、悪いことじゃない。全身を小さくまとめて動いている証拠。無駄な動きがそぎ落とされた結果と解釈できるからだ。
同じチームにお手本がいるのは幸せ?
一瞬、打球の様子を見極めるように“小足”を使ってリズムをとって、決して打球と衝突しない動き。ボールを投げる右腕が前に伸びるのと交差するように、グラブの左手が右肩へ向かうアクション。終始、腰を割って、頭の位置が低いまま動ける一連の動作。なんだか、田中広輔そのものを見ているようだ。
上手くなったなぁ……と思う。高校時代のフィールディングとは別人のようだ。
お手本にできる選手が同じチームにいることは、若い選手にとって幸せなことだな、と思って、ふっと“逆目”が頭をよぎった。
お手本だと思っている間は、追い越せないんじゃないのか。追い越してはいけない存在、それがお手本なのでは……。
いやいや、プロのサバイバルにそんな“おセンチ”などあるわけがない……。どっちなの? と訊いてみるよりあれこれ迷ってみるほうが、キャンプの時はなんだかキャンプらしい。