マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER

広島の二軍キャンプは地味でも熱い。
中村、桑原、木村、赤松が土の上で。 

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安倍昌彦

安倍昌彦Masahiko Abe

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photograph byKyodo News

posted2018/02/11 11:30

広島の二軍キャンプは地味でも熱い。中村、桑原、木村、赤松が土の上で。<Number Web> photograph by Kyodo News

広島二軍キャンプの一番人気はやはり中村奨成。とはいえ、彼だけが一軍を目指しているわけでもないのだ。

胃がんから復活した赤松真人の姿も。

 守備練習を終えて、今度はフリーバッティングに臨んだ木村聡司の打球があっという間に外野を襲う。

 とにかく、バットが振れる。ブンブン、バットを振っていく。多少タイミングが外れて、わずかに体が流れても、そこで強烈にバットを振っていく。泳いで打ったように見えた打球が、放物線になってレフトフェンスの上のネットを越えていく。

 その隣りのバッティングケージ。

 パッと見てわかるほど、スリムなユニフォーム姿の選手がバッティング練習を続ける。

 背番号38……誰だっけ?

 メンバー表で確かめる。「赤松真人」とあった。

 赤松だ。

 去年の今ごろは、胃がんの切除手術を受けた直後。療養生活をしていたはずだ。

400本以上のヒットを打ってきた「一軍の実力」。

 ユニフォームの下半身がパンパンに充実した若い選手たちの中で、腰回りの細さに“病み上がり”のなごりを残しているが、それでも、その細い体でスイングしたその打球が低いライナーになって外野へ飛んでいく。

 そのライナーが遠くへ飛んでいってもなかなか地面に落ちてこないのが、ペナントレースで400本以上ヒットを打ってきた「一軍の実力」だ。

 “きのう今日”の選手とは、積み上げてきたものが違う。その身に刷り込んできた年月が違う。

 バットを上から下へ振り下ろし、ボールを斜めにバッサリ切り捨てると、もう1本、低いライナーが左中間へ飛んでいった。

 打ち終わった赤松真人がケージから出てきたその目の前では、捕手・中村奨成がショートバウンドの止め方を繰り返し、繰り返し、その身に刷り込ませている。

「背番号22」が丸くなって、マスクをかぶっているから顔も見えない。

 ゴールデンルーキーが顔を隠して背中を丸め、地味に地味に、基礎技能を身につけようとしている。

 人知れずプロに進み、3ケタの背番号で4年目を迎える若者もいれば、実感として命を懸けた再起を挑むベテランもいて、背負いきれないほどの期待を背負った18歳が泥にまみれる。

 みんな、みんな、土の上で闘っている。

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