松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER

松山英樹、棄権しても明日は来る。
ファウラー「ヒデキ、またやろうな」 

text by

舩越園子

舩越園子Sonoko Funakoshi

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photograph bySonoko Funakoshi

posted2018/02/05 17:30

松山英樹、棄権しても明日は来る。ファウラー「ヒデキ、またやろうな」<Number Web> photograph by Sonoko Funakoshi

ショット後すぐに左手をクラブから離す松山英樹。普段は痛みを表に出さないゴルファーだけに、相当な激痛が予想される。

初日の13番で、松山の左手首に激痛が走った。

 10番からスタートした初日。序盤の数ホールは松山もファウラーもパーが続いていたが、沈黙を破るように松山に異変が起こったのは、4ホール目の13番(パー5)だった。

 ドライバーショットが大きく左に曲がり、ボールは砂地の上、木の下に止まった。だが問題はボールが止まった位置ではなく、インパクトした直後に松山の左手首周辺に走った激痛だった。

 それでも松山は痛みをこらえたまま次打は3番ウッドでグリーン手前まで持っていき、ラフの中からうまく3メートルへ寄せて、この日、最初のバーディー獲得。

 しかし、松山が初バーディーを喜ぶ仕草は皆無で、すぐに飯田光輝トレーナーを呼び、左手首や親指の付け根あたりのマッサージを受けた。14番のティショットもインパクトとほぼ同時に顔を歪めながら左手を離し、再び飯田トレーナーによるマッサージ。

 15番のパー5では痛みの中で再びバーディーを奪ったが、そのグリーン際では飯田トレーナーがいつでもロープ内に入れるようにインサイドロープのクレデンシャル(入場証)を特別申請するなど、物々しい空気が立ち込めていた。

 それは、これまで松山のラウンド中に一度も感じたことのない一種異様な空気。冷や汗が出てきそうな緊張感。その空気を感じたとき、松山の左手首周辺には、これまでとは違う大きな異変が起こっていると直感した。

「痛い」「やめたい」と普段なら言わないことを。

「異変」を感じさせられたのは、それだけではなかった。

 痛みをこらえながら初日の18ホールを回り終え、2アンダーで上がった松山は「思っていたより(いいショットが)打てたから、まあ良かったかな」と形式的な言葉を返していたが、左手に質問が及ぶと急に語気を強めた。

「痛いですよ。できればやめたいです。(ショットへの影響は)ありますよ。でも痛いのを我慢して打つしかないんで」

 その答え方も、いつもとは少々異なる一種の「異変」だった。「痛い」「やめたい」などとは、いつもの松山なら、まず言わない。「我慢して打つしかない」は、その日、13番の2打目から18番を終えるまで自分に言い聞かせていたフレーズだったのだろう。

 松山がこれまで米ツアーで途中棄権したのは、2014年シーズンに2度、2016年シーズンに2度あったが、棄権する以前の段階で「痛い」「やめたい」と言ったことは、少なくとも私の記憶にはない。

 今回は、それほど痛いんだな。そう確信した。もしかしたら棄権するのではないかな。そう想像せざるを得なかった。

【次ページ】 「プレーしてダメなら納得いきますけど……」

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