松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER
松山英樹、棄権しても明日は来る。
ファウラー「ヒデキ、またやろうな」
posted2018/02/05 17:30
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph by
Sonoko Funakoshi
フェニックス・オープンは松山英樹が昨年と一昨年に2連覇を果たした大会だ。55年前にアーノルド・パーマーが達成した3連覇を今年、松山も達成できるかどうか。そこに大きな期待と注目が集まっていた。
クラブハウス前の選手専用駐車場の一角には、同大会の過去の優勝者専用の駐車スペースが設けられている。その中でも“角地”にあたる一番手前の最高の場所。
そこが『2016/2017 Champion Hideki Matsuyama』にリザーブされた輝かしい場所だった。
大会パンフレットを開けば、一番多く写真が載っているのは、言うまでもなく松山だった。ちょっぴり風変りな企画もあり、「スーパースターの顔 混ぜ合わせ」と書かれた数ページには全部で6つの顔写真が載っていたのだが、どれも何かが変。最後のページを飾っていた写真を見て「あ、松山くんだ!」と思ったのだが、よく見ると、やっぱり何かが変だった。
それもそのはず。これは誰かと誰かの顔を合成したものだそうで「さあ、誰と誰でしょう?」というクイズ形式になっていた。松山くんだ」と思った松山風の顔の下には「2年前に首位タイで上がった2人」というヒントが記されていた。つまり、一昨年にプレーオフを戦った松山とリッキー・ファウラーの顔が合成されたもの。
なるほど、この太すぎる眉毛はファウラーのものだな。そう思って眺めれば、松山のようで松山ではないことも頷けたのだが、それはさておき、パンフレットのクイズ1つ取っても、松山がどれほど注目の存在であったかが、おわかりいただけることだろう。
敗れたファウラーが「ヒデキ、またやろうな」。
予選2日間は、ちょうどそのパンフレットのクイズの拡大版のようなペアリングで、松山は昨年大会でプレーオフを戦ったウエブ・シンプソン、そして一昨年のプレーオフを戦ったリッキー・ファウラーと同組になった。
初日のラウンド中、ロープの外側を歩いていたら、ファウラーの父親と叔父に出くわした。「これ見ましたか?」と例の合成写真を見せると、2人とも大笑いしながら「リッキーとヒデキで、リデキだ」と命名。
そうやって笑う一方で、ファウラーの父親ロッドは時折り神妙な顔になった。
「リッキーとヒデキがこうして一緒にこのコースを回っていると、どうしてもおととしの戦いを思い出す。17番でリッキーがグリーン奥の池に入れた瞬間は、今でも忘れられないんだ」
ロッドはそう明かしたが、一昨年の大会の中で私の記憶に一番鮮明に残っているのは、プレーオフで敗れたファウラーが、我々日本メディアの囲み取材を受けていた松山の横を通り抜けながら「ヒデキ、またやろうな」と声をかけた一瞬の出来事だ。
「Hideki! We can do it again, right?」
そして翌年、松山は再び優勝争いに絡み、2連覇を達成した。ファウラーも健闘したが、4位に終わった。だから今年、松山もファウラーも「優勝争い、またやろうな」と思いながら、ともに初日のティグラウンドに立ったことは、問わずとも、語らずとも、想像できることだった。