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Bリーグ川崎とNBA王者は似ている?
コーチ、選手が突き詰めるものとは。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2018/02/03 07:00
川崎を率いる北ヘッドコーチ。厳しさと規律を求めることで、チームに一本芯を与えようとしている。
別の視点を持っているアシスタントコーチの重要性。
北はHCになって7年目を迎える。バスケに限らず普通の企業もそうだが、1人の力に頼った組織には限界がある。
川崎とNBA王者ウォリアーズの共通点を感じるのも、この部分だ。ウォリアーズのカーHCの話題が出た時、北HCはこう話している。
「似ているかどうかはわからないですが、自分にとって2人のACは重要です。佐藤は、選手と接する時間も長いし、細かな映像分析をしているから、僕には気がつけないことを指摘してくれます。
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もう1人のアシスタントコーチである勝又は、選手時代スタメンでプレーした経験は多くない。自分は現役時代ベンチスタートをあまり経験していなかった分、ベンチに座る選手の気持ちを理解しきれない部分があります。そんなときに、別の視点を持っている勝又の意見は大きな意味を持っていますからね」
北が名前を挙げた勝又穣次ACは、チームスタッフを伴い、締めのラーメンを食してから、市内の寿司屋さんをハシゴするという伝説を持つ。
彼は観客に囲まれる試合だけではなく、普段の練習も、きちんと七三分けにセットしていたりする。たかが髪型1つかもしれないが正装して臨むのは、彼の真摯な姿勢の現れなのだろう。
川崎の“何か”にライバルたちも触発されている。
些細なことかもしれないが、チームが同じ方向をむき、規律を持つための活動を強く意識しているのが、川崎である。
口にするのは難しいことではない。しかし、徹底的に実践するのは難しい。
そして、徹底するために何が必要なのかをつきつめて行動しているのが、川崎のチームとしてのありようなのだ。
決してあきらめない意志は、前進するための力になる。
それもあってかライバルたちは、川崎に“何か”を感じている。1月27日の試合後、千葉・大野篤史HCは北HCの元に歩み寄って健闘をたたえるために、笑顔で右手を差し出した。
何より驚いたのは、川崎と千葉が死闘を演じた翌日、横浜でのこと。
横浜ビーコルセアーズ対名古屋ダイヤモンドドルフィンズは、名古屋が最大24点差をひっくり返す大逆転勝ちを飾った。
名古屋の梶山信吾HCは、勝因をこう話した。
「ハーフタイムに、選手たちには、昨日の川崎さんと千葉の試合の話をしました。バスケットの面白さって、あそこだと思うんです。最後まであきらめなければ、何が起こるかわからない。ああいう試合を見ていると心を打たれるし、見ている方も面白い。だから、その話をしました」
その試合に関係ないはずの川崎に心を打たれた――。これこそが川崎にとって誇りあるものだろう。