ゴルフPRESSBACK NUMBER
タイガー・ウッズが天才たる所以。
復帰戦、消えた才能と究極の努力。
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph bySonoko Funakoshi
posted2018/01/29 17:30
ゴルフにとってのタイガー・ウッズは、誰とも比べることができない存在感を持っているのだ。
復帰1年以上前から、家に深いラフを作って……。
どん底からの復活は奇跡なのか。確かに、ウッズの復活はどの場合も奇跡的な復活だったが、それは奇跡ではなく、ウッズの努力の結晶だった。
ファーマーズ・インシュアランス・オープンの舞台トーリーパインズGCはウッズが過去7勝を挙げ、2008年全米オープンも制した得意コース。
だが長期で戦線離脱していれば、戦いに求められる緻密な感覚は薄らいでいく。かつて数多の勝利をこの地で挙げた戦士であっても、その天才的な才能は衰えていく。
そのことをウッズは大会前、いや復帰する1年以上前から考え、そのための対策を練っていたという。
「トーリーパインズの深いラフから打ち出すことは、試合から離れていたこの12カ月、僕が経験できないことだった。でもその感覚をわずかでも体感するために、僕は家のチッピング練習場の一角をオーバーシードして、深いラフを茂らせ、芝の奥深くに沈んだボールを打ち出す難しいショットの練習を積んできた」
実戦とはまったく異なる環境での練習だけでは十分でないことは百も承知だった。だが、それでも無駄ではない。無意味ではない。
「考えられるあらゆる努力をした。最大限のことをして、必死に戦った」
それは、かつての天才が失われつつある才能を取り戻すための最後の砦。それが、王者なりの復活の仕方だったのだ。
以前は自然にできたことを、今は考えて実行する。
このぐらいのアゲンストの風なら、3ヤードプラスでいいな――そういう計算を「以前の僕は何も考えず、自然に感じ取ることができた。そういうことが簡単にできた」とウッズは言う。それこそが、いわゆる天才が天才たる所以だったのだろう。
だが、長い戦線離脱や人生の諸々の出来事を経た今、その才能は失われてしまっているそうだ。取り戻せるのかどうかも定かではないが、無いなら無いで「今は考えながらプレーしている。考えなければ計算が立たない。僕にとって、それは大きなチャレンジだ」。
しかし、チャレンジは不可能ではない。挑むチャンスがあるのなら挑む。努力して打ち克って見せる。
そんなチャレンジを続ける気力がウッズに今も備わっていることが、ファンにとっては最大の朗報である。
「今週、4日間をプレーして、たくさんの課題が見えた。だから、再び練習の日々だ」
次なる試合は2月半ばからロサンゼルス郊外のリビエラで開催されるジェネシス・オープン。
究極の努力家は、再び天才として姿を見せてくれるはずだ。