ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
石川遼は“大人の事情”を壊す達人。
選手会長になる前から数々の実績が。
posted2018/01/27 08:00
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph by
Yoichi Katsuragawa
スマートフォンに長文のメッセージが入ったのは、年が明けてすぐのことだった。石川遼は送り主の名前が目に入った瞬間、「ちょっとドキっとした」という。
前年度までジャパンゴルフツアー選手会を引っぱった宮里優作から直接届いた、次期選手会長就任の打診だった。
宮里は昨年まで2シーズン、この要職を務めあげ“本職”では賞金王に輝いた。今年は欧米ツアー参戦を目指して海外に出る意向を持っていたため、誰がバトンを引き継ぐのかはこのオフの懸案事項だった。
その数週間前。2018年シーズンは日本を主戦場とすることを明かした石川に、すでに就任の要請があったのではないかと尋ねたときには、「ずいぶん勘繰りますね。先輩たちを差し置いて、できないでしょう」と笑っていた。
それだけに1月の選手会理事会で選手の互選で正式決定するまでは、実感より驚きの方が大きかったかもしれない。
史上最年少の26歳、しかしプロキャリアは10年。
短いオフを経て、シーズンは1月のアジアシリーズで開幕した。初戦のSMBCシンガポールオープンから、石川はこれまでとは違った注目を浴びている。
26歳の選手会長は、'13年から同職を務めた池田勇太の就任当初の27歳を下回る最年少。
とはいえ、16歳でプロになった石川には10年のキャリアがあった。日本では、ここまで14勝。昨秋に出場権を失ったPGAツアーには5年在籍した。
選手としての実力が、要職での実績にそのまま反映されるとは限らない。優れたリーダーには人望も必要だろうし、企業人との付き合いが多いプロゴルフ界では、社会性の高さも問われる。だから、新しい選手会長選びは毎度、難航する。
ただし石川にはこれまで、抜群の知名度とは異なる分野で、ゴルフ界に貢献してきた実績がある。自身の名前を冠したNPO法人が中心となり、独自の手法でジュニアや若手育成に寄与してきたのだ。