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宮崎・日章学園、中高一貫の育て方。
選手の8割が内部進学、Jリーガーも。
posted2018/01/20 17:00
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph by
Getty Images
全国高校サッカー選手権は、試合とともに公式プログラムも毎年興味深い。
プログラムには出場各校の選手リストが載っているのだが、その項目の1つに「前所属」がある。要するに中学校時代、どこのチームに所属していたかというものだ。
各地域で名の通った町クラブやJクラブのジュニアユースなどが多いが、ある高校の出身欄に並ぶ校名が目にとまった。
「日章学園中学」
今年度の選手権に、宮崎県代表として出場した日章学園。3回戦で流通経済大柏(千葉)に敗れて、全国的に大きく扱われることはなかった。その日章学園は、プログラムに掲載された30選手中24人が日章学園中出身。中学出身者が多い高校は他にもあるが、8割にも及ぶ割合は異彩を放っていた。
中高一貫でのサッカー強化。Jクラブのジュニアユースとユースのような縦の関係をつくる学校は増えている。
たとえば2年前の選手権で決勝進出した國學院久我山(東京)。中学時代からともにプレーしてきた部員たちに高校入学のメンバーが加わることで、都内屈指の強豪となった。また日本代表クラスの選手で言えば、ヘタフェで活躍する柴崎岳は青森山田中から高校へと進んだ“内部進学組”である。
「中学でも高校と同じコンセプトのサッカーを」
宮崎県は2017年時点で、Jリーグチームがない。興梠慎三(浦和)などが卒業した鵬翔が名を知られているとはいえ、お隣の鹿児島や熊本に比べると高校サッカー界で存在感が強いわけではなく、人材の確保が難しい。
有望選手が数多く入学してくる状況ではない中、日章学園が取り組んでいるのが、中学校と高校の6年間を通じての選手育成だ。
なぜこんなに中学からの出身者が多いのか。1回戦の北陸(福井)戦後、日章学園の早稲田一男監督の囲み取材でそんな質問があった。「中学については総監督として偉そうにしてますけど」と冗談めかしながら、アプローチ法を教えてくれた。
「学校が中高一貫になってから10数年経ちますが、他にできない利点というところで、中学でも高校と同じコンセプトのサッカーを目指しています。現場での指導やミーティングを含めて試行錯誤していますが、ずいぶんよくなってきているとは思います」