Jをめぐる冒険BACK NUMBER
森保ジャパンの意義ある1-0発進。
“縦”を消されても工夫で取った1点。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byKyodo News
posted2018/01/11 12:20
攻撃に厚みを加えていた右ウイングバックの藤谷壮。東京五輪世代である以前に、彼らは日本サッカーの明日を担う若手でもあるのだ。
マンマークなら、他の選手にスペースが生まれる。
4年前の今大会が立ち上げの場となった手倉森ジャパン(リオ五輪代表)とは異なり、森保ジャパンは前述したように、すでに昨年12月に試合を行っている。それは、つまり相手にスカウティングの機会を与えるということも意味していた。
しかし、だからこそ試されたのが戦術理解度であり、指揮官がコンセプトに掲げる「柔軟性」であり、「対応力」だった。
本来ならワンツーやフリックパスなどを駆使して中央から攻略したいところだが、コンディション面や連係面が高まっていない現状では難しい。だが、“縦のルート”を塞がれた日本は、マークされている2シャドーが囮になることで、サイドや相手の最終ラインの裏に活路を見出し、パレスチナを押し込んでいく。ところどころでミスも散見されたが、工夫やチャレンジはたしかに見て取れた。
そのチャレンジが20分、結果につながった。
再びドリブルで持ち上がった板倉が中央を突き進み、井上とのワンツーでフリーになり右足を振り抜く。これが、ゴール左に決まった。
「前がマンツー気味で付かれていたので、自分が何とか入って行って、そのスペースを使えたらチャンスになると思っていた」と、板倉自身が振り返る会心のゴール。
ディフェンスラインの選手が持ち上がって数的優位を築き、相手のマークを剥がすという点で、森保ジャパンの象徴的なゴールと言っていい。「やろうとしていることを実践してくれた」と指揮官も賛辞を贈った。
森保監督「後半も同じことをトライしようとしていた」
もっとも、攻略の糸口を見出したはずの日本は、後半に入ってトーンダウンしてしまう。「相手がボールアプローチを厳しく激しくギアを上げてきた中で、我々にミスが出て、後手を踏んだところがあった」とは森保監督。コンディション不良、連係不足が後半に入って如実に表れ、シュートまで持ち込めなくなった。
「柔軟性」や「対応力」のコンセプトに照らせば、例えば、板倉をボランチに上げたり、交代選手を使ったりしてシステムを変更してもよかった。だが選手交代は小松→田川亨介(鳥栖)、三好→高木彰人(G大阪)、浦田→遠藤渓太(横浜FM)と、同ポジションで入れ替えただけにとどまった。
ただし、「後半も同じことをトライしようとしていた」という指揮官の言葉を聞けば、戦い方を大きく変えなかったのは、3-4-2-1のテストや選手たちの柔軟性の確認といった意味合いが強かったのかもしれない。