第94回箱根駅伝(2018)BACK NUMBER
区間配置から読み解く「第94回箱根駅伝」。
「3強」を崩すチームはあるか。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byAFLO
posted2017/12/30 15:30
例年、区間エントリー後も各チームの激しい戦略の読み合いが行われる。優位に立つのはどの大学だろうか。
神大は変化球を投げず、1年間積み重ねた王道を。
<『王道』 神奈川大学>
まさに、王道、正攻法。
大後栄治監督の10人の配置は変化球を投げることなく、1年間積み上げてきたものを発揮しようという意図が感じられる。
1区山藤篤司(3年)、2区鈴木健吾(4年)、3区越川堅太(2年)は前回と同じ並び。ただし、越川は今季の全日本大学駅伝の5区で青学大の下田を突き放し、優勝の立役者となった。実力は数段アップしている。
最良のシナリオは、山藤が先頭集団でレースを進め、2区の鈴木で先頭に立つ。そして越川でさらに差を広げられれば、神奈川大が往路の主役に躍り出る。
また、前回の8区で活躍した大塚倭(おおつか・やまと/4年)を4区、5区には山上りに並々ならぬ意欲を見せていた荻野太成(2年)を配置し、目標に対して出来る限りの手は打った印象だ。
ただし、復路はやや手薄。補欠に入っている大川一成、大野日暉(ともに4年)が7、8、9区のいずれかに入ってきそうだが、総合優勝となると意外性の一撃を誰かが放つ必要がある。
ただし、アンカーに経験豊富な鈴木祐希(4年)が入ったのは面白い。大後監督は「10区に信頼できる“誰か”を取っておいた方が、今回はいいような気がするんです」と話していたが、総合優勝争いに絡むとなれば、この配置が大きな意味を持つことになりそうだ。
往路に“超大学級”が並ぶ東海大は層も厚い。
<ついに『最適解』発見か? 東海大学>
10人の名前の配置を見ると、美しいほどに整っている。両角速(もろずみ・はやし)監督は、ようやく区間配置の正解を見つけたのかもしれない。
特に往路は見せ場を作ってくれそうだ。1区關、2区阪口竜平、3区鬼塚翔太(全員2年)と並ぶラインナップは、“超大学級”。關が実力通りの力を発揮し(とある他大学の監督は、「關君は本来、1区が向いていると思いますよ」と話していたことを思い出した)、阪口が他校のトップランナーと競い合えば、いい位置で鬼塚にたすきを渡すことが出来る。
鬼塚は「当日の調子は走ってみなければ分からない」とも言われるが、ガツンとハマれば3区終了時点で総合優勝にかなり近づくことも可能かもしれない。なぜなら、復路にも人材を温存できそうだからだ。
区間エントリーで再認識したのは、東海大の層の厚さ。現在の10人でも十分に整っているのに、補欠に三上嵩斗(みかみ・しゅうと/3年)、館澤亨次(2年)という今季好調のふたりが残っている。彼らを復路に残しておける余裕があるとするなら、東海大は初の総合優勝に一歩近づくことになるだろう。加えて、10区に4年生の川端千都を配置してあるのも安心材料である。