野球クロスロードBACK NUMBER
松田宣浩がこだわる“熱男”の愛称。
WBCのモヤモヤから優勝までの苦闘。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byNaoya Sanuki
posted2017/12/22 11:00
ベテランの域に差し掛かりながらも、「全試合フルイニング出場」の目標は変わらない……。
チームスローガンである「ワンダホー!」に変更!?
「ワンダホー!」
この今季第1号をきっかけに、WBCまでテッパンだった本塁打後のパフォーマンスを、今年のチームスローガンである「1(ワン)ダホー!」に変えた。
「ようやく、自分のシーズンが始まったな」と気持ちが前向きになったとはいえ、正直、違和感はあった。「熱男」を定着させた松田にとって、当然の感情である。
足りないもの。それをはっきりと認識させてくれたのは、ソフトバンクの前監督である秋山幸二の助言だった。
5月2日の西武戦。試合前の打撃練習でのことだ。ヤフオクドームに訪れていた秋山から、松田はこう言われたという。
「マッチ、お前がいい結果を出すためには、やっぱり熱い気持ちがないとダメだな」
松田熱男の心が、グツグツと煮えたぎる。
「『お! そういうことか!!』と思って。やっぱり、熱い気持ちがないと打てない。自分には熱男が似合っとるんやねって」
この試合の5回、松田は“本拠地での今季初アーチ”を左中間に描くと、ベンチ前でいつもの雄叫びを上げた。
「アッツォ~!」
もう、迷いはなかった。
不振から脱却するためにスイングの軌道を変える。
矛盾しているかもしれないが、心が熱くなればなるほど、松田という男は冷静になれる。技術的な面で自分の武器を見いだせたのも、ちょうどこの頃だった。
「今までは、キャンプで試してきたことをオープン戦でじっくり確認しながら武器を見つけていたんですけど、今年は練習不足というか、そういうことができなかったんで」
不振を脱却するために、松田はスイングの軌道を変えた。
過去2年間は外野フライを打つことを心がけ、軌道を少しだけ「下から上へ」と変化をつけることでライナー性の打球が増えた。だが、4月までは、「外野フライを打とう」と意識すればするほどスイングの軌道にムラが生じ、本当に外野フライしか打てなくなった。
だから、バットの軌道をレベルスイングに修正した。
これが功を奏し、5月は8本塁打。打率も2割7分9厘まで上昇し、松田は完全に本来の自分を取り戻した。