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松田宣浩がこだわる“熱男”の愛称。
WBCのモヤモヤから優勝までの苦闘。 

text by

田口元義

田口元義Genki Taguchi

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photograph byNaoya Sanuki

posted2017/12/22 11:00

松田宣浩がこだわる“熱男”の愛称。WBCのモヤモヤから優勝までの苦闘。<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

ベテランの域に差し掛かりながらも、「全試合フルイニング出場」の目標は変わらない……。

「全試合に出られたんで。そこはね、よかったなって」

 シーズン成績は2割6分4厘、24本塁打、71打点。

 総合的には前年より成績が落ちたと、周囲には判断されるかもしれない。シーズン最終戦、松田は自嘲気味ながら、誇らしげにこう言っていた。

「もうちょっとね、ホームランも打てただろうし、打率も上げられたと思うんですけどね。でも、今年も全試合に出られたんで。そこはね、よかったなって思います」

 そう、全試合に出たことが何よりも尊く、価値のあることなのだ。

 失意のWBCからシーズン序盤の不振。松田は、厳しい現実に目を背けず立ち上がり、文字通り熱男を貫き通した。だからこそ、今季もソフトバンクに不可欠な選手として全試合に送り出され、日本一という結果でもって応えてみせたのである。

「よかったというか、分厚い1年でした」

 松田が安堵の表情を浮かべた。

熱い気持ちがなくなったら、ユニフォームを脱ぐ。

 来年は35歳のシーズンを迎える。

 年齢的にも「ベテラン」と呼ばれてもおかしくはない。

 それでも松田は、「もちろん、全試合に出ますよ!」と高らかに宣言し、その意義を力強く説く。

「昔はね、100打点とか打点王を獲りたいとか言っていたけど、最近の一番の目標は全試合に出場すること。怪我をしたり、2年、3年と結果が出なくて『アツオー!』とかやっていると、『なんやあいつ、熱男とか言って』って言う人が出てくると思います。そういう恐怖心は常にありますよ、はい。

 でもね、熱い気持ちで野球ができんくなったら、ユニフォームを脱がないといけないな、と思っているんで。これを周りが評価してくれているから、松田宣浩って選手がいる。

 来年は35になるし、体力とか成績が落ちるかもしれんけど、経験とか自信っていうのは年々加算されていっているんで。2015年の熱男より、2017年の熱男のほうがパワーアップしていますよ! ますます元気です。気持ちも若くなっている感じがしますね。若い選手にだって、全然負ける気がしないんで」

【次ページ】 長嶋茂雄の「ミスター」のように長く愛される愛称に。

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