バレーボールPRESSBACK NUMBER
石川祐希の中央大をついに倒して。
筑波大セッター・中根聡太の執念。
posted2017/12/14 17:00
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph by
Kiyoshi Sakamoto
主役を食う存在感。
ドラマや映画の世界ならば、脇役とみなされるポジション。エンドロールのトップに名前が載ることはなくても、強烈なインパクトを残す。
スポーツの世界も同じだ。
戦う前は誰もが同列であるはずなのに、周囲からは優勝候補と言われる選手やチームが存在し、彼らを倒そうと自分の、チームの形を築こうと必死で技を磨く。
そして、その積み重ねた時間を武器に、主役をも食らう。
11月27日から12月3日まで開催された全日本大学バレーボール選手権男子大会。頂点に立ったのは早大で、メディアに最も多く取り上げられたのは3位の中大だった。
だが、その結果以上に強い記憶を焼き付けたのはまた別の、指揮官が「雑草軍団」と口にする筑波大だった。
準決勝の試合開始は10時。大学バレーボールの試合は記者席が用意されていないため、記者も通常は観客席から試合を観戦するのだが、試合開始30分前には大田区総合体育館の観客席は人で埋め尽くされていた。
石川祐希を倒すために、中根聡太は積み重ねてきた。
家族や友人などの関係者やOB、根強い大学バレーボールファンなど顔ぶれはさまざまだが、多くの人のお目当ては、1年時から全日本でも活躍し、これが大学生として最後の戦いとなる石川祐希。この日の2試合目に登場する、石川を擁する中大が4連覇を達成するのか。はたまた、最後に敗れるのか。
主役の石川がコートに現れるだけで、歓声が湧き起こる。
同じ日本一を目指す大学生であるはずなのに、対戦相手の筑波大はどこかヒール(悪役)の様相。だがそんな独特の雰囲気が、筑波大でキャプテンマークをつける男に火をつけた。
トーナメントを見た瞬間から。いや、最上級生になってこのチームが発足した瞬間からずっと意識してきた相手との、最後の対戦。主将でセッター、チームを束ねる中根聡太は短い言葉に力を込めた。
「やってやりますよ。この日のために僕たちは死にもの狂いでやってきましたから」