バレーボールPRESSBACK NUMBER
石川祐希の中央大をついに倒して。
筑波大セッター・中根聡太の執念。
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byKiyoshi Sakamoto
posted2017/12/14 17:00
星城高校時代は石川とともに6冠を達成した中根聡太。筑波大でも4年時に主将を務めるなど、中心選手としてチームをけん引した。
「『スラムダンク』みたいになっちゃいましたね」
だが、そのあと1つを乗り越える力は、もう残っていなかった。準決勝では高い効果を残したジャンプサーブも踏み込みが足りず、威力が乗らずにポイントを得るどころか、ミスになる。
中大戦では面白いように決まったパイプ攻撃に対しても、決勝で対峙した早大はブロックの枚数を揃え、抜けたコースはレシーブでつなぐ。相手が一枚も二枚も上だった、と感服しながら、筑波大の秋山央監督がポツリと言った。
「『スラムダンク』みたいになっちゃいましたね」
マンガの世界と、現実の世界がリンクする。スラムダンクの主人公・桜木花道を擁する湘北は、初出場を果たしたインターハイで初戦を勝ち上がり、2回戦で前年まで3連覇を成し遂げている優勝候補の筆頭、山王工業と対戦。死闘の末に勝利を収めたが、大勝負にすべてを出し尽くしたため、3回戦で敗退した。
秋山監督が重ねたのは、まさにその状況。
勝負の世界は甘くない。もっといい試合をしたかった、いい試合を見せたかった、と言いながらも、秋山監督の表情に後悔はなかった。
「大エースなんて誰もいない。そんなジャガイモみたいな雑草軍団が、みんなでチームをつくって立ち向かって、スター軍団に勝てたこと。大げさじゃなく、準決勝にすべてをかけて、出し尽くして、あれだけの試合をした。最後に勝つ、負けるという結果以上に、彼らを誇らしく思います」
石川に勝ちたい。そう思って、ずっと走り続けて来た日々はこれで終わり。15日から開催される天皇杯皇后杯全日本選手権大会が、このチームで戦う最後の試合になる。楽しみたい、と笑顔でコートに立った試合で、今度は格上のVリーグのチームに勝利する。
そんなフィナーレも、悪くない。