マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
もし東芝が野球部を閉じていたら……。
社会人に進む学生数はプロの4倍!
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKyodo News
posted2017/12/12 08:00
Bリーグのバスケットボールチームを手放した東芝だが、野球部とラグビー部は雇用の維持も含めて存続が決定された。
東芝ほどの老舗なら、横並びの連鎖反応が必ず起こる。
東芝ほどの社会人野球の老舗が店を閉じると、「そんな時に、ウチが社会人野球を続けていてよいのか……」、そういうチームが必ず出てくるものだ。日本のアマチュア野球の世界は、意外に連鎖反応と横並びの精神が根強い。
まず同業他社が揺らぎ、大手が揺らげば中小はもっと大きく動揺して、行き着くところは社会人野球という組織全体の崩壊……と、それ以上の想像は怖くてできない。
プロよりも、社会人に進む学生の方が4倍以上多い。
ならば万が一、「社会人野球」というカテゴリーそのものがなくなってしまったら、野球界はどうなっていくのか。
昨年、「2016ドラフト」でプロ野球に進んだ高校生・大学生は86名(育成含む)。それに対して、社会人野球の企業チームに進んだ学生は350名を超える。
プロ野球を目ざす学生は多いが、その狭き門は誰もが認識しているわけで、“第ニの”目標として、また選手によってはむしろ第一目標として「社会人」に向けて精進を重ねる若者たちもとても多い。
その目標を喪失してしまったら、学生球児たちはモチベーションの置きどころをどこに探したらよいのか。
一生懸命野球に励んでも、学校を卒業した時点で“線路”が途切れてしまっているのがわかっていたら……。
言葉にしたくはないが、この国のアマチュア野球全体の崩壊にもつながりかねない、ものすごく重大な分岐点で、「東芝」は踏みとどまってくれた。
アマチュア野球がしぼんでしまえば、そこを供給源として成り立っているプロ野球だって、同様の道をたどることになるのだ。
体じゅうにいやな汗ばみを感じながら、今そんな思いにかられている。
ならば社会人野球のために、アマチュア野球を愛する我々にできることは何か。それは、「社会人野球の現場に足を運ぶこと」に尽きるであろう。
こんなに面白い野球を展開しているのに、意外と人が見に来ない、意外と大会の開催が知られていない。これが、私の実感だ。