沸騰! 日本サラブ列島BACK NUMBER
弘法は筆を、ムーアは馬を選ばず。
チャンピオンズCを制した超瞬発力。
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byYuji Takahashi
posted2017/12/04 11:25
フェブラリーステークス以降14着、7着、5着と負け続きで人気薄だったゴールドドリームも、ムーアの手にかかればこの通りだ。
先行有利の流れを一発でひっくり返した瞬発力。
2着テイエムジンソク、3着コパノリッキー、4着ケイティブレイブら、先行した馬たちで決着しそうな展開だったが、一頭だけ別次元の末脚を繰り出し、差し切った。
先行有利な流れだったことは、前半1000m通過61秒6という時計が示している。「ダートでは少しずつギアが上がっていく馬が多いのに、この馬は切れ味がすごい」とムーアが言うゴールドドリームには不向きな流れに思われたが、スローの瞬発力勝負になったことが幸いした。
褒めすぎかもしれないが、初騎乗でその桁外れの瞬発力を引き出したムーアの騎乗は、見事だったというほかない。
もちろん、ムーアだけが走らせたわけではない。フェブラリーステークスを勝ったあと、惨敗がつづいたことには出遅れ癖が影響していた。それを矯正するため、ゲート内に縛って動かないようにし、さらにプール調教を併用してリラックスさせるなど、陣営の工夫があった。
外国馬はゼロでも、ムーアはワールドクラスだった。
同一年のJRAダートGIコンプリートにより、ゴールドドリームは最優秀ダートホースの座を大きく引き寄せた。
年内は休養し、来年は連覇がかかるフェブラリーステークス、今年最下位だったドバイワールドカップなどを見据えていくようだ。
オーナーの吉田勝己ノーザンファーム代表は「まだ4歳と若いから今後が楽しみ。ゴールドアリュールの後継種牡馬になってほしいですね」と笑顔を見せた。
首差の2着だったテイエムジンソクは、13番という外枠からのスタートだったため、出して行ったら掛かってしまった。そのぶん最後の伸びに響いた。
3着のコパノリッキーは、自分の競馬に徹した結果の大健闘で、9番人気という低評価を見返した。
プレビューで◎をつけたケイティブレイブは4着。中央のGIを勝つには、もうワンパンチほしいように感じた。
外国馬がゼロで寂しく感じていたが、名手ライアン・ムーアが「これぞワールドクラス」という騎乗で私たちを魅了してくれた。