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優勝と準優勝は、何もかもが全く違う。
浦和のACL制覇が教えてくれること。
text by
轡田哲朗Tetsuro Kutsuwada
photograph byAFLO
posted2017/11/27 11:30
ペトロヴィッチ前監督が鍛え上げてきたチームに、堀監督が勝負強さを植えつけた。今のレッズを「勝負弱い」と呼ぶことは誰もできないはずだ。
決勝で敗れた側のことなど、多くの人は覚えていない。
今からほぼ4年前、ミシャ監督時代で最初の決勝戦だった2013年のヤマザキナビスコ杯(現ルヴァン杯)の決勝で柏レイソルに敗れた後に、主将の阿部が話した言葉は今でも忘れられない。
「準優勝という響きは良いけど、2位というだけだから。勝たなきゃ、チームの名前も、選手たちの名前も残っていかないから」
決戦までの1週間、アジアサッカー連盟の公式サイトや決戦を盛り上げるための企画では、10年前の決勝戦が何度となく取り上げられた。その時に、埼玉スタジアムに形取られた大きな星のビジュアルを久しぶりに目にした。一般的にはコレオグラフィーと呼ばれるものだが、浦和のサポーターたちは選手の視覚に訴えるものとして、ビジュアルサポートと呼んで誇りを持っている。
そのナビスコ杯決勝戦で国立競技場に浦和のサポーターが作り上げた、クラブのエンブレムと優勝カップをつかみ取りにいくビジュアルも本当に素晴らしいものだった。しかし、今になってその光景が振り返られることがあるだろうか。あるいは、当事者だった両チームのサポーター以外で、その光景を思い出せる人はどれだけいるだろうか。
美しいスタンドも、これで歴史に残る。
言ってみれば、タイトルを取るか取らないか、優勝するかしないかというのは、こういうところに表れるのだ。
この日浦和がアルヒラルを相手に守勢に回ろうと、勝利という結果を掴んだことで、試合前後のバックスタンドに広がったクラブのエンブレムと優勝カップが表現され、それを両サイドのスタンドに2007、2017の数字と星をあしらったところから伸びたリボンがつなぐという素晴らしいビジュアルも歴史に残っていく。
阿部が話したように、2017年の優勝クラブとして浦和の名前は永遠に残り、そこにはどんな選手がいたということも残っていく。
よく「日本で一番高い山は富士山だと誰もが知っている。だが、二番目に高い山を知っている人はほとんどいない」と言われるが、サッカーも同じだ。優勝と準優勝の差を示す表現としては残酷なようだが、これが現実なのだ。