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優勝と準優勝は、何もかもが全く違う。
浦和のACL制覇が教えてくれること。
text by
轡田哲朗Tetsuro Kutsuwada
photograph byAFLO
posted2017/11/27 11:30
ペトロヴィッチ前監督が鍛え上げてきたチームに、堀監督が勝負強さを植えつけた。今のレッズを「勝負弱い」と呼ぶことは誰もできないはずだ。
槙野「ミシャと堀さんの力が合わさっての結果」
浦和は今大会、2人の監督の下で戦ってきた。グループステージからラウンド16の済州ユナイテッド戦までは“ミシャ”の愛称で知られるミハイロ・ペトロヴィッチ監督、準々決勝の川崎フロンターレ戦からはコーチから昇格した堀監督が指揮を執った。
トータルして見れば14試合で30得点という攻撃力を武器に優勝したように見えるが、その前後でチームの色は大きく変わってきていた。それは、前監督の下で戦った8試合で21得点、堀監督の下での6試合で9得点という内訳からも明らかだ。
槙野智章は、その変化を「自分たちの良さを出すために、相手の良さを消すというのが堀監督のやり方」と表現していた。
圧倒的にボールを保持して押し込んで、相手に呼吸をさせないほどに試合を制圧して勝利する。それは、サッカーにおけるロマンだ。だが、それだけでアジアチャンピオンという結果が残せたのかどうか。
槙野は「ミシャがこのチームに残したものにプラスアルファして、堀さんがチームに必要なものを落とし込んでくれた。ミシャと堀さんの力が合わさっての結果だと思う」と、全てを終えた後に振り返った。
ミシャ時代に5度の大一番を戦い、優勝は1度だった。
ペトロヴィッチ監督が率いた昨季までの5シーズンで、この試合に勝てばメジャータイトルというゲームを5回経験し、優勝は1度だった。その舞台に立てなければ優勝する可能性もないのだから、そのこと自体は素晴らしいことであり成果だ。
しかし最後の最後、死に物狂いになって守ろうと足が伸びてくる相手を振り切ってまで悠々とゴールを量産し、勝利するところまでチームを作り上げるのがどれほど難しいのかを示す事実でもあった。
だからこそ、この決戦で浦和は勝利という結果を掴むことに対して最大限のフォーカスをした。選手たちは第2戦に向け「ホームなのだから攻撃的にやる。受け身にならない」と話してきた。
だが、それは無秩序なまでに後方の選手たちが前線に飛び出していくことを意味しない。我慢強く、したたかに、相手のスキを見逃さないこと。気を抜いたら一刺しするぞという姿勢を見せ続けることもまた攻撃性の1つだ。アウェーゴールというアドバンテージを最大に生かす、タイトルを勝ち取るためのサッカーを90分間完遂したからこそのチャンピオンだった。