プロ野球亭日乗BACK NUMBER
活躍した選手より取材対象への愛。
プロ野球MVP投票、“忖度”の度合い。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKyodo News
posted2017/11/25 11:00
2017シーズンのMVPを獲得した丸とサファテ。この2人の選出について異論は少ないだろう。
制度改善も最後は投票する側の意識に委ねられる。
それは山岡に1位票を投じた記者は2位には黒木優太投手(6勝3敗2セーブ、25ホールド)、3位には近藤大亮投手(1勝1敗1セーブ、25ホールド)とすべてオリックスの選手に投票していることだった。
MVPは全国の新聞、通信、放送各社でプロ野球担当歴が5年以上の記者が3名連記で投票し、1位に5点、2位に3点、3位に1点が加算された総合計で決定される。今年の有効投票数はセ・リーグが286票、パ・リーグが258票だった。以前は1人の記者がセ、パ両リーグに投票できたが、今は複数球団をカバーする遊軍記者などを除き、担当チームの所属リーグのみに投票できるシステムに改善されている。そのためセ、パで投票数に差が生じているわけだ。
ただ、そうした制度改善も、結局は投票する側の意識で全く意味のないものとなってしまうということだ。
取材を重ねることで情が移るのは否めないとはいえ。
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担当記者は1年間、ほとんどチームと行動を共にし、様々な取材を重ね、選手とも昵懇になるし、ならなければいいネタをとることなどできない。情も移るし、そういう感情がいわゆるタニマチ気分につながることもある。
それだけならいいが、ニュースや情報を得るために関係が深くなればなるほど、選手や関係者と利害関係が生じることもある。
そこで起こるのが、投票が選手や関係者への“忠誠”の証であったり、自分の思い入れの発露の場になってしまうことだ。山岡への1位票というのは、客観的にはそういう馬鹿げたチーム愛、選手愛の結果にしか見えない。
実はこれは新人王投票での大山票の多さも同じことだった。
今季の大山は確かにシーズン後半には4番を任されるなど、結果を残したルーキーの1人ではある。ただ成績は75試合で打率2割3分7厘、7本塁打。京田の141試合で149安打、打率2割6分4厘、4本塁打、23盗塁には見劣りするし、実は大山に次ぐ3位だったDeNAの濱口遥大投手の22試合で10勝6敗、防御率3.57にも数字的には及ばないといえるものだった。
それでも京田でもなく、濱口でもなく大山に新人王の票を投じた記者が49人もいた。その事実に、正直、驚きは隠せないのである。