マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
有力投手がドラフト指名外のカラクリ。
「“エライさん”に説明するのが……」
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2017/11/14 07:00
プロに入るための能力と実際に活躍するための能力には、ズレがあるケースがある。西川大地もそのタイプだとは思うのだが……。
“野球のプロ”ではない人に緩急は……。
今の球団社長以上の“幹部”たちは、ほとんどが親会社出身の人たちである。
「球団を経営している組織のトップに“野球のプロ”は少ないでしょ。西川の緩急を説明してもわからんのですわ」
そんなら、めんどくさいから消しとこか……。そういう展開になりがちだという。
投手の球速に関しては、諸説ある。
速球がコンスタントに140キロ前半をマークして完投できる能力のある投手なら、1イニング限定なら150キロが十分見込めるというスカウトもいる。
実際、社会人・JR東日本東北当時、130キロ後半がアベレージだった攝津正投手(現ソフトバンク)。
プロに入って1年目から1イニング限定のセットアッパーで投げ始めたら、いきなり150キロ前後を続けたものだから、そりゃあビックリしたものだった。
「ピッチャーって、そういうもんですよ。毎試合先発、完投を期待されたら、力をセーブしないとパンクしちゃいますから。そのへんの防衛本能みたいなものも、たぶんピッチングセンスの一部分なんでしょうね」
当時すでに26歳になっていた攝津投手の指名を推し、担当スカウトとして入団に導いた作山和英スカウトが、以前そんな話をしてくれてとてもよい勉強になったものだ。
最近のはやりは、指名順位の“縛り”。
話を戻そう。
「それと、もしかしたら、“縛り”があったのかもしれないですね…」
ドラフトの歴史を振り返ってみると、指名される選手の側にも少しは自己主張というものがあって、「自由獲得枠」がなくなってからも、密かに選手側から希望球団や希望しない球団を伝えたりすることがあったが、近年のはやりは“縛り”だという。
つまり、「3位以下の指名だったら進学させる」とか、「上位でなかったら社会人に行きます」というように、指名に条件を付けるようになった。
昨年は、ドラフト6位で日本ハムに指名された履正社高・山口裕次郎投手が、「上位縛り」の約束を守って、社会人野球・JR東日本に進んだ。これで、もし日本ハムに入ってしまえば、他球団に対して“ウソ”をついたことになるからだ。
履正社高側の見識、英断だったと思う。