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“気配りの人”新井貴浩の今季総括。
「最後まで諦めず戦う姿を……」
posted2017/11/14 16:30
text by
川村由莉子(Number編集部)Yuriko Kawamura
photograph by
Yuki Suenaga
「ボタン、閉めた方がいいかな?」
「ビール! いや、やっぱりアイスコーヒーで(笑)」
日本シリーズ真っ只中の某日、広島カープの主砲・新井貴浩はスーツに身を包んだ厳かな佇まいとは裏腹に、陽気な言葉を飛ばして場を和ませながら、ゆっくりと語り始めた。
「DeNAの選手たちは勢いがあって気迫が伝わってきた。こちらが攻撃している側なのに攻められている感じがした。ラミレス監督に対してもすごいなと思ったよ。でも、今も悔しい。負けを認めた上で腹立たしさや悔しさは今でもある」
CSファイナルステージ。レギュラーシーズン第3位のDeNAに対し、圧倒的な優位が予想されていたセ・リーグ王者の広島は、初戦を勝利したものの、その後まさかの4連敗。33年ぶりの日本一への夢は断たれてしまった。
「最後まで諦めず戦う姿をチームメイトに見せなければならない」
広島にとってあとがなくなったCSファイナルステージ第5戦6回裏、DeNAとの点差はすでに4点も開いていた。そんな状況下で今シーズン最後の得点を放ったのは、4番に立った新井だった。それは決して狙って打ったものではない。チームに見せる背中の影響力の大きさを誰よりも自覚している新井が若い世代に見せた意地であり、メッセージだった。
「自分はみんなの仕草や言動を見るようにしていた」
リーグ優勝後のインタビューでも新井は以下のように答えていた。
「やっぱり若いチームだから、みんな一生懸命やるし、いい子なんだけど、若いがゆえに良い方にも悪い方にも、どっちにも転ぶ危うさがあった。だから自分はみんなの仕草や言動を見るようにしていた」
(936号 新井貴浩「この身を捧げて」)