サッカー日本代表「キャップ1」の男たちBACK NUMBER
“川崎山脈”から日本代表、高校教師へ。
代表1キャップ、箕輪義信の人生。
text by
吉崎エイジーニョ“Eijinho”Yoshizaki
photograph by“Eijinho”Yoshizaki
posted2017/11/10 11:00
赴任一年目の菅高校は高校選手権予選で早期敗退。じっくり指導に取り組める来年以降、結果は変わるか?
ジーコ監督からも「おまえが悪いわけじゃない」と。
0-0で進んだゲーム、やはり箕輪は持ち前のフィジカルを前面に出して戦った。川口能活がここでも「いいぞ、やれ!」と幾度も励ましてくれた。
しかし最後の最後に箕輪に悲劇が起きた。左サイドからのセンタリングを駒野友一が足に当て、コースを変える。それが相手に渡り、再び浮き球が中央に上がる。箕輪が相手と競り合う状況になった。対面したウクライナ選手は、少し身体が触れた程度だったにもかかわらず、その場に崩れ落ちたのだ。
主審がPKを宣告する。
日本は0-1でこのゲームを落とした。
え、なんで、今のが? 箕輪自身はそう思った。試合後もジーコ監督から「おまえが悪いわけじゃない」と幾度も慰められた。
「相手はそこまでの僕との競り合いで、勝てないことがわかっていたんだと思います。だからわざとに倒れたようなところがあった。まあ、それも国際試合というところでしょう」
この試合、箕輪はもう1つ「運命を変えた」というシーンに境遇している。失点の少し前のシーンで、村井慎二のCKから自らが放ったヘディングシュートがゴール脇に逸れていったのだ。
「決まった、と思えるタイミングだったんですが、やっぱり身体を当てられて体勢が少し崩れているんです。あれが決まっていれば……監督の印象度が違い、2度めのキャップもあったかもしれません」
「あそこに自分がいれば、みんなのためになれたのに」
翌年5月、箕輪はこれを悔やむ出来事に遭遇している。
ワールドカップの最終エントリー入りが決まっていたCB田中誠が負傷のため急遽帰国が決まった。代わりに選ばれたのは、ナビスコカップでトレーニングを続けていた自分ではなく、ハワイで休暇を取っていた茂庭照幸だった。
「グループリーグのオーストラリア戦、フィジカルで押されている状況をテレビで観て、あそこに自分がいれば、みんなのためになれたのに、と思って、本当に悔しい思いがしたんですよ。自分の代表キャップが1だったから、あの状況でジーコも呼びにくかったのかな、と考え込んだりして」
「キャップ1」に泣いた、と感じた瞬間だった。