サッカー日本代表「キャップ1」の男たちBACK NUMBER
“川崎山脈”から日本代表、高校教師へ。
代表1キャップ、箕輪義信の人生。
posted2017/11/10 11:00
text by
吉崎エイジーニョ“Eijinho”Yoshizaki
photograph by
“Eijinho”Yoshizaki
箕輪先生。
現在の箕輪義信の職場での呼び名はこうだ。現在41歳。高校教師はもともとやってみたい職業だった。2010年にコンサドーレ札幌を退団、翌年に現役キャリアを引退後、2012年から教職についた。
都内から40分、神奈川県川崎市にある県立菅(すげ)高校の体育教師にして、サッカー部監督の彼を訪ねた。
取材時に正門前で写真を撮影中、そこを通りかかった女子生徒2人組に振ってみた。
先生、サッカーの日本代表だったんだよ。
「えーっ本当ですか! すごい!」
驚いた様子を見せながら、笑っている。
「ガタイいいなと思ってたんです」
箕輪は「やめてくださいよー。その程度のリアクションなんだから」とまた笑う。その裏には「キャップ1の男」が背負った深い苦悩があった。
「日本代表キャップ1の男」の言葉を聞きたい。
日本代表「キャップ1の男」に絞って、続けて話を聞いていく。過去に約460人の選手たちが日本のフル代表としてプレーした。そのうち約90人が一度だけの日本代表を経験している。
なぜ彼らの声を聞きたいと思ったのか――日本代表の価値を今一度、再確認したいからだ。
'90年後半に世界への挑戦権を賭けていた時代、「日本代表」という存在は、熱く闘志をたぎらせられる対象だった。しかしその後、チームの存在が大衆化していくにつれ、その熱は少しずつ失われていったように感じる。
では「日本代表キャップ1の男たち」は、成功者か、あるいは挫折を味わった者たちなのか。
日本サッカー協会の登録プレーヤー数が約94万人、星の数ほどの草サッカープレーヤーがいるなか、数字だけで考えれば、日本代表になれたことだけでも最高級の成功者だ。
あるいは「人生、チャンスはたった一度」「安易に次があると思うな」といった経験を痛いほどに味わった者たちでもある。
たった一度の日本代表経験は彼らにとってどんな経験だったのか。その後の人生にどんな影響を及ぼしたのか。そして現在の日本代表に何を思うのか。
一度だけだからこそ、思うところがあるのではないか。これらを聞き出しながら、違う角度から日本代表を描きたい。そんな思いで、この企画を進めてみるつもりだ。
第1回目に登場していただいたのは、箕輪義信だ。