野球善哉BACK NUMBER
安田尚憲「考える力がないと……」
歴史書や勉強で培った力と、野球。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byKyodo News
posted2017/11/08 17:00
「野球エリートが勉強もできること」が肯定的な文脈で語られるようになったことがすでに、状況が変わりつつある証拠だ。
安田「考える力がないと、成長の度合いに関係する」
安田は履正社という強豪校に在籍しながらも、勉強を続けることで、考える力の重要性を強く感じてきたという。
「考える力がないと、成長の度合いに関係するんじゃないかなと思うんです。指導者からいわれたことをどう受け止めるか。例えば指導者から怒られたり、試合の途中で交代させられたりすると最初はへこみますけど、そこからどう考えるかが大事だと思うんです。それが分からないと、いつまでも自身を変えられない。指導者にいわれたからやるのではなく、自分で考えて練習をやってみる。次は結果が出るんじゃないかと思い浮かべて練習することは大切なんじゃないかなと思います」
日本での指導は、往々にしてトップダウン式になりがちだ。それは勉強、スポーツどちらの分野でも1つの課題であろう。
安田は歴史書を読み漁ってきたことから、日本史のテストは90点を常時超える。偏差値は75ほどもあったという。それは、勉強をしてきたことに加えて、興味を持って歴史書を開き、物事の文脈を理解する力を培ってきたということだ。その力を野球へとつなげていることに意義がある。
履正社の監督は、選手の理解力で指導法を変える。
指導歴30年の履正社・岡田龍生監督は、勉強もしっかり取り組む選手とそうではない選手では、成長度合いはやはり異なってくるという。
「安田に関しては理解力が優れていると思います。そういう選手に対する指導方法としては、より高いレベルの話をして導いてやらないといけないじゃないですか。高度な話ができる選手であれば、そうでない選手と話の仕方は違ってきますし、それだけ成長スピードは速くなります。逆にいえば、理解する力があまりない選手はそれだけ成長のスピードは遅くなってしまう」
安田のインタビューを聞いていると、決して取材者に乗せられて大きなことを言ったりしないことに気がつく。おっとりしているようにも見えるが、等身大の自分を捉えて確実な目標を立て、確実に前進していくのだろうなと想像が浮かぶのだ。