プロ野球亭日乗BACK NUMBER
DeNA、若き才能と危うい未成熟。
敗れはしたが魅力的なチームだった。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNaoya Sanuki
posted2017/11/05 12:20
あわやスイープかと思われる3連敗から、2勝を返して日本シリーズを緊迫したものにしたDeNA。その粗削りさは、確実に魅力の1つでもある。
大人の集団・ソフトバンクに対して……。
故障明けながら1番として圧倒的な存在感を示した柳田悠岐に始まり、第2戦の神走塁に再三のファインプレーを見せた今宮健太、決して調子がいいとは言えなかったが再三の好守備と第6戦の先制本塁打でチームのムードを盛り上げた松田宣浩。そして最後は3イニングを投げ抜きMVPに輝いた絶対守護神のデニス・サファテら能力の高い選手たちが勝つという目標のために1つになれる。
そういう大人の集団がソフトバンクであり、チームとしての成熟度が日本一の称号にふさわしいことを示した戦いだった。
敗れたDeNAも、決して悪いチームではなかった。主砲の筒香嘉智を軸に宮崎敏郎、倉本寿彦に、日本シリーズでは苦しんだ桑原将志、またあの強力ソフトバンク打線と互角以上に渡り合った今永昇太や濱口遥大ら若い才能がひしめく。それをまとめて引っ張ってきたアレックス・ラミレス監督の統率力もここまで来られた原動力だった。
1つのプレー、1点に対する集中力の差が出た。
個々の選手が持つ潜在能力の高さはシリーズで実証された。ただ、その一方でこの敗北が示すものも確かにあったはずだ。
1つのプレー、1点に対する集中力をいかに持続できるか。結局、勝負とはその積み重ねだということをDeNAナインは思い知らされたシリーズだったはずである。
勝負を決めた第6戦。象徴的な場面は2点をリードした8回2死三塁から、3番手・砂田毅樹のワンプレーにあった。柳田の一塁寄りに転がったゴロ。この当たりに三塁走者の代走・城所龍磨が飛び出し、三本間で一瞬止まってしまった。
「代走のランナーで一塁側のゴロだったのでギャンブルスタートを切っていると思った。一塁に投げようとしたときに、(三本間で)ランナーが止まっているのが見えたけど、(一塁に)投げるのを止められなかった」