プロ野球亭日乗BACK NUMBER
DeNA、若き才能と危うい未成熟。
敗れはしたが魅力的なチームだった。
posted2017/11/05 12:20
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Naoya Sanuki
タイミングはアウトだった。
延長11回2死一、二塁。ソフトバンクの7番・川島慶三の放った打球がライナーで右前に落ちる。前進守備の右翼手・梶谷隆幸が捕球し、真っ直ぐホームで待つ嶺井博希に向かってボールが放たれた。
「タイミング的には余裕でアウトだったので、ホームプレートの後ろでタッチに行く準備をしていた」
だが、腰を落として捕球態勢に入った嶺井の目の前で、ボールがアンツーカーで不規則に大きく弾んだ。必死にミットを差し出したが、その上を飛び越え、ボールがバックネットに転がる間に、二塁走者の中村晃がサヨナラのホームに滑り込んだ。
ソフトバンクの2年ぶりの日本一奪回は、そんなあっけない幕切れだった。
同点ホームランの内川には「余裕があった」。
最後は底力の差の勝利だった。
1点を追う9回1死。負ければ第7戦の最終決戦になだれ込む。そんな土壇場で飛び出した主砲・内川聖一の同点本塁打が象徴だ。
「気持ち的には余裕があった。何とかしたいというみんなの気持ちが僕に乗り移った」
DeNAの守護神・山崎康晃の決め球・シンカーを叩いた打球が左翼席に飛び込んだ。
この追い込まれた絶体絶命の場面で、それでも起死回生弾を放てる強い精神力。それを裏打ちした、失投を見逃さずに打ち返す集中力と技術。ソフトバンクの強さとは、こういう優れた力と精神的な強さを持った集団だということだ。