“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
日本とイングランド、その差って何だ。
U-17W杯で見えた世界最先端の育成。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byAFLO
posted2017/11/01 10:30
優勝したイングランド代表にはプレミア強豪の下部組織所属選手も多い。そんな彼らと日本はどう戦うのか、今後の焦点となる。
出し手と受け手が切り替わる連動性の凄まじさ。
話をラウンド16の日本戦に戻そう。確かに日本の選手達の奮闘は素晴らしかった。相手の運動量が落ちた際にチャンスを作るなど、技術レベル、組織力と忍耐力の高さは、世界レベルで通用することを実証した。
その一方で、フレッシュな状態の前半はどうだったか。圧倒的にイングランドに押し込まれ、縦パスを簡単に通されると受け手に前を向かれた。もしこの時点で先制点を奪われていたら、準決勝でイングランドに1-3で敗れたブラジルと同じ道を辿っていたかもしれない。
より具体的に記せば、日本の選手たちは距離感を保ちながら複数で寄せてコースを消したり、限定する守備を実行していた。だが、イングランドの選手は僅かな隙間を迷うことなく、日本の選手の重心が片側にかかった瞬間を見逃さず、スピードあるパスで通してきたのだ。
彼らの中には“縦にボールを運ぶ”という意識が刷り込まれて、それが防がれた場合に横パスを使うという優先順位がしっかりしている。そして受け手も予備動作の質が高く、どんなに速いボールでもファーストタッチで前を向ける技術は特筆に値した。さらにパスの受け手がすぐさま次のパスの出し手に切り替わっていく連動性、戦術・戦略性の高さには凄まじさを感じるほどだった。
やっぱり個人をもっと鍛えた上での集団での戦いを。
そこにはスコアだけを見て「惜しかった」では片付けられない、明確な差が存在した。
「U-17日本代表は非常にタフで素晴らしいチームだった。しかし、やはりイングランドは驚きだった。イングランドを見て、森山監督もずっと言っていたように、僕ら日本のサッカーは“技術がある”と言っているけど、ハードな戦いの中で出せない技術は、もはや技術とは呼べないんです。“フィジカルが弱いから集団で戦おう”に逃げすぎてしまってはいけない。やっぱり個人をもっと鍛えた上での集団での戦いと考えないと、世界からどんどん置いていかれてしまう」(影山監督)
この大会だけですべてを語ることはできないが、アンダーカテゴリーにおいてのイングランドの優勝は大きな意義があり、日本のみならず、世界の育成年代に改めて一石を投じる出来事だった。
驚くべきスピードで進化するヨーロッパの育成年代。その中枢となっている戦術的、戦略的発展の大波に置いて行かれないためにも。いつまでも“集団で戦う”ということを“逃げ道”にしていてはいけない。