“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
日本とイングランド、その差って何だ。
U-17W杯で見えた世界最先端の育成。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byAFLO
posted2017/11/01 10:30
優勝したイングランド代表にはプレミア強豪の下部組織所属選手も多い。そんな彼らと日本はどう戦うのか、今後の焦点となる。
エジル、ノイアーを輩出したドイツの育成改革。
近年、ヨーロッパのサッカーシーンは育成面でめまぐるしい発展を遂げている。オランダやスペインがその先駆けとして大きな成果を上げてきたが、近年はドイツやベルギーが追随してきた。中でもドイツは2000年のユーロ惨敗をきっかけに、“タレント育成プロジェクト”として育成年代の抜本的な改革に着手した。
具体的に説明すると“ゲルマン魂”と表現される球際の激しさ、1対1の強さ、スピードと最後まで絶対に相手に屈しない闘争本能を独自の文化として大切にする。その一方でクリエイティブな選手の発掘・育成と、個人戦術とチーム戦術を徹底して植え付けながら、ゲームの中でのコレクティブさを引き出す。
ドイツサッカー協会が主導して、ドイツ国内の隅々にまで発掘網を広げ、選手の理想コンセプトを明確にした判断基準を持って発掘と育成プログラムを整備した。ソフトとハード両面で徹底したドイツ特有の育成メカニズムの結果、メスト・エジル、マヌエル・ノイアー、マッツ・フンメルス、ジェローム・ボアテンク、ベネディクト・ヘベデス、サミ・ケディラらを次々と輩出した。
そのシステムに応えるかのように、彼らは2009年のU-21ヨーロッパ選手権で優勝を果たす。これを足がかりにA代表の主軸として定着。2014年のブラジルW杯で優勝を収めたことは記憶に新しい。
フィジカルとスピードに加えて、ポゼッションを。
そして近年、そのドイツに追随して育成の抜本的な改革を行ったのがイングランドだった。イングランドが取り組んだのは、ドイツ同様に“伝統的な武器を消さない上でのオリジナルな育成”だった。イングランドと言えば、縦に速いサッカーを身上とし、フィジカルとスピードを駆使して相手を切り崩すスタイルだ。
そこを“独自の文化”として残しながらも、ボールポゼッションを融合させた。相手の戦況を把握して遅攻と速攻を織り交ぜるなど、より効率の良いアプローチで崩していく方向性を模索した。